
株式会社スノーピーク(代表取締役社長:山井梨沙、本社:新潟県三条市、証券コード:7816)は、関西学院大学 感性価値創造インスティテュートと共同で、テント空間が創造力向上に与える影響について実証実験を行いました。今回の実証結果は、スノーピークと関西学院大学が展開しているCamping Campusの効果の一端を実証したものであり、その成果は2022年3月25日(金)に「第17回日本感性工学会春季大会」にて発表されました。
スノーピークと関西学院大学は2020年6月から包括連携協定を締結し、大学内構内の共有スペースにキャンプ体験を取り入れる、Camping Campusという取り組みを行っています。この取り組みは、学生にリラックスできる空間を提供するとともに、主体的な学びやフラットなコミュニケーションを促進することを目的としたものです。テント利用者や、Camping Campusの活動に参加した学生からは、キャンプ体験が学びやコミュニケーションを促進するとの感想が得られましたが、効果が科学的に確認されたものではありませんでした。そこで今回は、Camping Campusの効果を数値として測定するため、実証実験を行いました。
<研究の内容>
大学構内の小教室(室内条件)と芝生広場(屋外条件)の2か所にテントを設置し、その中、あるいは外で創造性課題を行うことで、テントというキャンプに特有の空間が創造性を高めるかを検証しました。
<研究結果>
テントがある場合は、ない場合よりも創造性課題の成績が高いことがわかりました(p< .05)。なぜテント内で創造性が向上するのかは今後の研究によって確かめる必要がありますが、この結果はCamping Campusの取り組みの効果を数的に実証するものであると考えられます。

さらに「閉鎖的な-開放的な」という印象と創造性課題の関係をもとに分析してみたところ、参加者は以下の3つのタイプに分かれることがわかりました。
- アウトドア群:その場所を開放的・健康的・陽気と感じたとき成績が高い
- インドア群:その場所を閉鎖的・重い・緊張したと感じたとき成績が高い
- 平常群:場所の印象と創造性課題の成績に明確な関係がない
そこで、タイプの違いも含めて再分析したところ、アウトドア群は室内よりも屋外で、インドア群は屋外よりも室内で、それぞれ創造性課題の成績が高いことがわかりました。このことは、クリエイティブな作業を行うときには、それぞれの人の特性に合った場所で行うことが大切だということを示していると考えられます。
また、全体的にはテントがある場合に成績が高い傾向が認められており、アウトドア群でもインドア群でも室内でテントがある場合に成績が高い傾向が窺えます。このことから、テントの用途がそれぞれの群で異なっている可能性が考えられます。つまりアウトドア群の人にとって、テントは室内に居ながらにして自然を感じられるアイテムであるのに対して、インドア群の人はテントを使って室内に自分だけのスペースを形成しているのかもしれません。こうした仮説を今後の研究によって検証したいと考えています。

<調査概要>
実験期間 | 2021年10月28日~11月5日 |
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参加者 | 関西学院大学に通う大学生21名(男性21名;平均21.4歳) |
実験条件 | 場所2条件(室内:学内の小教室、屋外:芝生広場)×テントの有無2条件(テントあり、テントなし)の4条件を、参加者内で比較。 |
創造性課題 | 遠隔連想テスト(Remote Associates Test, RAT: 創造的思考を判断するためによく用いられる測定方法で、一見無関係に見える複数の言葉の関係を答えさせる)のうち、作成時のテストで正答率が低かった3問を除いたうえで、19問×4セットに分割して用いた。この4セットは難度が同等になるようにした。 |
実施方法 | 学内の芝生広場と小教室にテントを設置した。テントあり条件ではテント内で課題を行い、テントなし条件ではテントを撤去して課題を行いました。この際、その場所の印象(閉鎖的な-開放的な、不健康な-健康的な、軽い-重い、など18項目)、現在の感情(楽しい、わくわくする、緊張した、など9項目)、およびその場所に対する評価(不快な-快適な、悪い-良い、など5項目)を問う質問紙調査も行いました。 |