【コラム】from STAFF忘れない、忘れられない佐渡という土地への旅
Experience開発課Sato Kei/佐藤 圭
日本の宝島、佐渡へ
私は、日本が好きだ。
この国で生まれ、さらにその中でも違う形で変化し、築かれてきた地方ごとの色がある。ある特定の地域で、何百年と受け継がれている文化がある。
LOCAL WEAR TOURISMは、その土地に根づいた労働と作業着の関係を追体験する旅。
今回、私がスタッフとして参加した「LOCAL WEAR TOURISM in SADO 2nd」
では、佐渡の風土、食、人、自然とつながることのできる体験がありました。
この旅の特別な体験は、フェリーに乗るところからはじまります。
新潟港から両津港に到着するまでの2時間半、私はほとんどの時間を屋上デッキで過ごしました。
視界いっぱいに広がる青い空、広大な日本海、乗客からのエサを待ちながらフェリーとともに飛行する無数のカモメとその甲高い鳴き声、力強く響くエンジン音。
ただそこに居るだけで気持ち良く、時間を忘れ、現実から解き放たれるようでした。
カモメが寄ってこない日には
1日目は、舟屋での開会式からスタート。この舟屋は加茂湖に面しており、昔は漁師が船置き場として使っていた場所です。
実は準備中、この近所に住む地元のおじいちゃんから不思議なお話を聞きました。
「毎日ここで静かな海を眺めていると、カモメのジョナサンが俺のところに挨拶しにくるんだ。でもジョナサンは他に人がいると寄ってこない。それが年に2回、あんたたち(スノーピーク)が来るときだよ。今年も来たんだね、ありがとう。」
今年で4年目となる佐渡のLOCAL WEAR TOURISMですが、スノーピークの取り組みが、着実に土地に根付いていることに気づき、嬉しくなった言葉でした。
島の魅力をまるごといただく、贅沢な一晩
開会式が終わると、600年以上前に建てられたという椎崎諏訪神社へ移動。お客さまとスタッフで、一緒にテント設営を行います。境内にいくつものテントやタープが並んだ光景は、まさにここでしか見られない景色でした。
その後、“朱鷺(トキ)のさんぽみち”と呼ばれる田んぼ道を通り、お風呂へ向かいます。残念ながら、ここでは朱鷺に遭遇できず……と思っていましたが! ラッキーなことに私はお風呂から朱鷺を見ることができました。
”朱鷺色”で知られる名の通り、淡い桃色の姿。絶滅危惧種に指定されており、滅多に目にすることができないのですが、他のスタッフやお客さまも見ることができたそう。この日は何か特別なパワーを感じました。
お待ちかねの夕食は、佐渡の皆さまにご用意いただいた豪華なお料理。私もお客さまとご一緒させていただいたのですが、この夜食べたあれもこれも、全部が美味しく、気付いたら山盛りご馳走になっていました。
1日目の締めには伝統芸能「鬼太鼓」を鑑賞しました。お客さまの眼差しは真剣で、その場にいたみんなが思わず魅入ってしまう素晴らしい舞台でした。
棚田を守る”ジジイ”の想い
2日目。朝の静かな加茂湖を眺めながら、スタッフ特製の朝食でお腹を満たした後に向かったのは、岩首昇竜棚田。展望台からの景色は、本当に美しいのです。
こうしてここを訪れ、「美しい」と言葉にするのは簡単ですが、この環境や景観の背後には、棚田を次の世代へ残そうと守り続ける地元の農家さんたちの苦労があります。このことを学び、実際に作業を体験できるのが、この旅のメインイベントである稲刈りです。農家さんのひとり、ジジイこと、佐渡棚田協議会会長の大石さんが、お話してくれました。
「観光客の方々が来て、きれいだなと思ってもらえればいいけれども、この景色をいつまで維持できるかはわからない。400年続いた景色を、あと100年は残したいなと思ってるよ。でも、今あるお米は、ほぼ僕らの年金をつぎ込んでつくっているから、利益にはならない。そういう田んぼなんだけども、僕にとってはすごく大切な風景なんだ。」
私たちにできることは何なのか。
スノーピークとしての答えのひとつとして、「LOCAL WEAR」の取り組みや、今回の「LOCAR WEAR TOURISM」があります。
到着したとき、一面黄金色に輝いていた田んぼですが、大人も子どもも鎌を片手にせっせと働き、皆さんの力であっという間にすべての稲を刈り終えました。
昼食には、棚田米のおにぎりをはじめ、佐渡の食材をふんだんに使ったごはんをいただきました。棚田を眺め、自然の音を聴きながらの食体験。五感が存分に満たされ、1泊2日の旅に幕が降りました。
佐渡が教えてくれたこと
スタッフはLOCAL WEARを着て、お客さまをおもてなし。私が着用していたのは、手ぬぐい生地で仕立てられたワンピース。風通しが良く、着心地も良く、天候に恵まれた今回の旅にはぴったりでした。
一度見たら忘れられない景色。一度会ったら忘れられない人。
それは単に美しいからというわけではないように思います。その中に眠る想いや願い、凛とした眼差しから、言葉にせずとも伝わってくる決意があります。佐渡では、人間や自然の力を肌で感じることができました。
冒頭で「私は、日本が好きだ。」と言いました。もともと旅行に選ぶのも国内ばかりで、異国へのあこがれよりも地方への興味が強かったのですが、新潟での出会いや体験が、より強く、私をそうさせたように思います。
日本の各地で受け継がれている伝統的な文化を知り、伝え、守ること。夢のような旅の中で、その大切さを、佐渡が教えてくれました。
自然と人、人と人がつながる新たな体験「LOCAL WEAR TOURISM」。
この物語は、これからも続いていきます。