【SDGs】from PARTNER「循環」で創る服の新しい未来のカタチ(後編)
タキヒヨー株式会社 素材開発/販売グループShimpei Watanabe/渡邉 晋平
Prologue
スノーピークアパレルが2021年8月から新たに取り組むコットン製品のリサイクル事業「UPCYCLE COTTON PROJECT」。
前編に続く今回は、商品化第一弾となるデニムをともに手掛けてくださったパートナー、繊維専門商社・タキヒヨー株式会社の渡邉晋平さんをお迎えし、スノーピークアパレル坂田との対談の模様をお伝えします。海外にも多数拠点を置き、世界のアパレル業界事情に精通するタキヒヨーとのトークセッション。どんな話が飛び出すでしょうか?
【INDEX】
1. 新たな取り組み『UPCYCLE COTTON PROJECT』とは。
2. パートナー企業と描く、新しい未来のカタチ。
左:株式会社スノーピーク Apparel開発課 エグゼクティブクリエイター 坂田 智大
右:タキヒヨー株式会社 素材開発/販売グループ 渡邉 晋平
お互いの考えとタイミングがうまくハマった。
坂田 スノーピークとしてはこれまでもリサイクル素材を使ったり、なるべく環境に負荷をかけない素材や方法での服づくりは心がけて取り組んできたんですが、その先の未来も考えていかなきゃいけないという思いもありました。
渡邉さん 海外、特に欧米のサステナビリティに対する意識は昔から高くて、日本より一歩も二歩も先に進んでいます。ここ近年、日本国内でも急速に広がってきて、当社でも特に力を入れている事業です。
坂田 サステナブルな部分に関しては、我々アパレルチームでも毎シーズン考えています。ただ、コットンって結構盲点だったんですよね。僕がチームの中でも天然素材メインの企画をしていることもあって、リサイクルのコットンを一つ軸に置きたいなと思い、今回のプロジェクトに至りました。そこでタキヒヨーさんにご相談したところ、非常に共感してくださって。
今回のデニムは、ファストファッションのデニムの生産が行われているグアテマラで、製造段階で出る大量の裁断片を綿に戻し、糸を紡いで新たな製品として生まれ変わらせた。
渡邉さん 坂田さんにお話をいただいた時、うちで構築していたアップサイクルのスキームはほぼ固まっていて、あとは企画を当て込むだけだった。それならこれを機に試してみようということで、社内的には「まず最初にスノーピークさんで」ということでGOが出ました。うまくハマりましたね。
坂田 すごくいいタイミングでした。タキヒヨーさんのスキームを使って、もう少しスノーピークらしい仕組みにするにはどうしたらいいんだろうってディスカッションしましたよね。それで、着なくなった服の店頭回収というアイデアを付加して、独自のプロジェクトに昇華させていった。
渡邉さん うちとしても、スノーピークさんみたいに今国内をリードしているようなブランドからお話をいただいて良かったと思っています。今回のプロジェクトは、スノーピークさんの完全別注として、スノーピーク専用ラインで作っています。
坂田 そうなんですか。それはうれしいですね。
面倒なことでも、わざわざやる意味がある。
坂田 リサイクルコットンという素材自体は他にもありますが、循環、つまり、回収から製造、販売までのサイクルを行うのは、今回の僕らとタキヒヨーさんの取り組みが業界で初めてだと思います。
渡邉さん サステナブル=持続可能。一回やって終わりではなく、継続していくことが大事です。坂田さんも同じ認識でいらしたので、やる意味はかなりあると思いました。
坂田 ありがとうございます。
渡邉さん このプロジェクトでは特に、裁断片から作る糸の質にこだわりました。リサイクルのものって繊維の質が良くなかったりするので、研究に研究を重ねてここまで来たという感じです。
坂田 糸作りから、織り、縫製、仕上げ、検品まで、一貫してお願いしていますが、タキヒヨーさんとじゃなかったら実現できてないと思います。
渡邉さん リサイクルってどうしても工程が増えてしまって、コストアップの要因は必ずついて回るものなんです。でも、それだと世の中にあまり広まらないじゃないですか。
坂田 そこがシビアな問題です。
渡邉さん しかも、新品だったら簡単に安く作れるものをわざわざリサイクルして作るって、すごくめんどくさいことをしているわけで(笑)。
坂田 そういうことですよね。でも、それをやるのがスノーピークです(笑)。
いい感じの風合いに仕上がったデニム。
渡邉さん 今回のデニムは、糸が結構特徴的です。リサイクルならではの粗野感というか、普通の糸よりちょっと毛羽が多いんですけど、製品になった時に表面のネップが、いい感じに味が出ている。そこがポイントですね。
坂田 生地は肌なじみが良くて、2~3回履くとすぐに柔らかくなります。縫製に関しても、糸の番手(太さ)を4種類くらい組み合わせていて、負荷の掛かる部分には太い番手の糸を使用しています。さらに擦れやすい部分はあえて細かいステッチの運針の指定をして、摩擦による糸切れが起きにくいようにするなど、デニム本来の持つ画期的で丈夫なワークウェアとしての、理にかなったディティールはしっかりと継承し、昔の人々が作り上げてきたデニムの文化を次世代につなげていくという役目も果たしたいと思っています。
環境問題と同時に洋服への愛着も感じて。
渡邉さん 今、サステナビリティが叫ばれていますが、そこにこじつけて商品を作ることって私はあんまり面白くないなと思っているんです。このプロジェクトはトレーサビリティ(透明性)や生産工程も見える、理にかなったリサイクル。これを実現できたというのは非常に大きいと思いますね。
坂田 そういう意味でも、洋服に対する愛着とか、アナログな部分を考え直すいいきっかけになりました。お客様にも、環境問題はもちろん、洋服の作られる工程に対しても改めて興味を持ってもらえたらうれしいです。
渡邉さん 業界的に見ても、リサイクルのものがデニムのような定番商品になるケースってあんまりないんです。定番だとある程度手に取りやすい価格帯でなきゃいけなくて、コスト面でなかなか難しい。定番ものに、こういうプロジェクトを当てること自体が魅力的だと思います。
このデニムを入口に、スノーピークをより知ってほしい。
渡邉さん 今後は店頭回収したコットン生地の他に、スノーピークさんで作った製品の端材をまた次の企画に使用していくことになると思います。次に作ったものから出る端材を、またその次に活かす。ずっとエンドレスで回っていくわけです。
坂田 先ほど渡邊さんがおっしゃたように、当たり前のことを当たり前にやるって、結構難しい。自分自身すごくやりがいを感じていますし、後々どうなっていくかも楽しみです。まずはスノーピークというバックグラウンドがあることと、タキヒヨーさんが共感してくださったことに感謝しています。
渡邉さん「こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。次は、裁断片をそのまま染めずに使うのも面白いかななんて考えているんですが、どうでしょう? スノーピークさんのような企画力のあるブランドだとうまくハマって、今後もいろんな商品が世の中に出てくるんじゃないかなと思っています。」
坂田 このデニムは、今までスノーピークと接点のなかった人たちにも一度手に取ってほしいですね。日常使いでもキャンプシーンでも着られるスタンダードなデニムということで、新しいユーザーさんが弊社と関わる接点となればいいなと思います。コットンの製品を店頭に持ってきてもらって、「スノーピークってこんなことやってるんだ」っていうことも見てほしい。お客さまと一緒に循環というサイクルも作っていけたらなと思います。
Epilogue
タキヒヨーとスノーピークアパレルが心を一つにして取り組んだ新プロジェクト。タイムリーな出会いから、環境問題や製品への思い、未来の展望まで、2人の生の声で聞くことができました。この対談を次へのステップに、さらに価値ある取り組みを行っていきます。始まったばかりの「UPCYCLE COTTON PROJECT」に、これからもご期待ください。