【働き方】from STAFF人間らしい働き方が企業を救う。(後編)

Prologue

自然を感じながら人と人がつながるキャンプの効果を、ビジネスに。スノーピークビジネスソリューションズが提案する「キャンピングオフィス」は加速する技術革新を背景に、人間らしい働き方や生産性の向上を模索する企業から注目を集めています。

この新しいコンセプトを生み出した代表の村瀬は、もともとIT企業の経営者。その発想の原点、そしてスノーピークとタッグを組むに至った経緯、アウトドアギアを取り入れた室内空間の演出、研修で得られる効果などをご紹介します。<全5話>

【INDEX】
 1. 屋内でもテントで仕事。
 2. 働く場所が「発想」を変える。
 3. 焚火が「チームの絆」を強くする。
 4. 人間らしい働き方が企業を救う。(前編)
 5. 人間らしい働き方が企業を救う。(後編)

設えが変わるだけで、会社は変わる

そもそも人間というのは、座る高さや向く方向、向き合う形など、ちょっとしたことで、簡単に心の状況も発言の内容も変わる、結構単純な生き物なんじゃないかと思っていました。ですから、設えが変わるだけで会社は変わるかもしれないという発想の基にトライしてみたわけです。それには絶対スノーピークの製品でなければダメだ、という確信を持っていたので、スノーピークのテントを会社の室内に張る計画を立てました。この計画は絶対うまく行くという確信がありましたし、この計画は素晴らしい価値があると思っていることを、どうしても山井社長に直接伝えたくなったんです。

そして山井社長が登壇する講演会で初めてご挨拶し、その後「Snow Peak Way」の焚火トークでお話をさせてもらい、熱いメールもお送りし、本社も訪問しました。我々の想いや未来の可能性をお伝えできた頃、山井社長から「会社をつくって社長をやってほしい」と言われたんです。最初は驚きました。でも僕らがやってきたことを表現するためには、スノーピークと本気で一緒にやるべきかもしれない。そう考えて、決断しました。

キャンピングオフィスが企業変革への第一歩に

我々の使命である「社会課題の解決」を突き詰めると、企業が抱える課題は果てしなく大きいと思い至りました。誰もが自由に働けて、チームが結束できる環境づくりや、イノベーションを起こせる人材育成は、今や企業のみならず日本の大きな課題です。ITが進化して人間がやらなくていい仕事が増えれば、人口減少にも対応できるし、人間はもっとクリエイティブな仕事に集中できる。それは、実は大きなチャンスです。

これから時代が大きく変わるか?という問いには、誰もがYES。自社も変革するべきか? これにもYES。じゃあ特効薬があるかというと、NO。となれば、今は小さなアクションで変化の兆しを生み出すのがベストな方法です。その時に「キャンピングオフィス」は最適だと確信できました。おそらく山井社長は、一瞬でそこまで読み解いたんですよね。その全体を見渡す視点やエネルギーが、僕らがコツコツ実践してきた方法とバン!と融合したわけです。

自然とつながり、正しい判断力を取り戻そう

働き方改革が向かうのは、スノーピークが目指す「人間性の回復」と一致します。人間性とは、自然の中で自然を感じながら思考する力。もともと人間は、五感を研ぎ澄ませて、正しい判断や、美しいデザインができる能力をもっているはずです。自然の恩恵を感じているからこそ自然への敬意があり、自分たちの未来のためにも自然を壊さない、そういう判断をできる力があった。それがいつしか失われ、瞬間的、短期的な利益に対する判断しかできなくなり、長期的な視野がなくなってしまった。そのリスクをキャンプというフィルターを通して、今こそ多くの企業に伝えるべきタイミングだと思うのです。

とはいえ、「自然の中で働く」という、今までにない市場をつくる道のりは簡単ではありません。少しずつ共感してくれる仲間や企業を増やし、研修やオフィス家具の提案、テナントビルとのイベントなどで認知を広め、メッセージを整理してカタログをつくりました。今では、反応してくれた企業と一緒に手がけた事例にメディアも注目してくれて、働き方改革の波もあり、スタッフがフル稼働でやっています。キャンピングオフィスを体験した方からよく聞くのは、「言葉にできないけれど、これだと思った」という感想でした。言葉にならないその感覚を深く読み解きたいと思っています。

人間の内なるエネルギーをいかに引き出すか

今は戦後から続く成長モデルが過渡期を迎えている時代。数字というモノサシで短期的リターンを目指したアクションだけでは実現できない、根本的な変化が求められています。その答えは外側からのシステムやロジックの導入ではなく、ひとりの人間が内側に持つエネルギーを信じ、引き出してあげることだと思うのです。

従来の常識から逸脱した新しいアプローチで個人の内側にあるパワーを引き出し、そのパワーどうしを融合させて大きく増殖させる。それを企業がいかに演出できるかが、これからの重要な経営テーマになるでしょう。キャンピングオフィスを入口に、たとえば地元で使命感を持って働く人をつなぐシェアオフィス「osoto」のような事例を日本中にたくさんつくりたいと、今は考えています。

※このインタビューは「2019 Outdoor Lifestyle Catalog」に掲載した内容に一部加筆修正を加えたものです(情報は2018年12月末時点)