スノーピーク 山井梨沙×日本環境設計 岩元美智彦 特別対談服から服へ。テントから服へ。(前編)

SNOW PEAK ReCYCLE PROJECT. 本格始動。
服から服をつくる、持続可能なものづくり。

スノーピークは、再生繊維の開発・製造、リサイクル事業等を手掛ける日本環境設計との共同開発製品第1弾「BRING T-shirt」を5月に発売し、同時に一部直営店にて不要になった繊維製品の回収も開始しました。さらに10月には第2弾として自社製造のニット製品「HQ WHOLEGARMENT」を発売しました。これを記念し、スノーピークHeadquartersで開催した「雪峰祭2019秋」にて、株式会社スノーピーク 代表取締役副社長 CDO 山井梨沙(以下 梨沙)と日本環境設計株式会社 取締役会長 岩元美智彦氏(以下 岩元)の特別対談を行いました。

ファシリテーター:日本環境設計 日比 伸一郎氏(以下 日比)

“いらない服を集めてつくったバイオジェット燃料で、来年の春、飛行機が飛ぶんです。”

究極の循環型社会をつくりたい

日比
皆さん、こんにちは。僕たちは日本環境設計と申します。ありとあらゆるものを循環させることを目指しておりまして、例えば洋服、そして皆さんの愛するテント。こういったものを循環させていこうという会社です。今日は僕たちがなぜ、スノーピーク様と一緒に自然を愛する皆さまにこういう提案をさせていただくのかをお話させていただきたいと思います。
岩元
日本環境設計の岩元でございます。弊社は2007年に創業した、まだ13年目のベンチャーであります。いろんなものを循環させたいという思いで、まず技術開発をさせてもらいました。皆さんにも一番馴染みのある「服」をリサイクルしたいなと、最初に成功した技術開発は、服からバイオエタノールを作ることです。「バック・トゥ・ ザ・フューチャー」という映画、皆さんきっとご覧になられたことがありますよね。劇中であのデロリアンが未来に行った2015年に、実際にいらない服でデロリアンを動かしたというニュースを、国内外でちょっとだけ取り上げていただきました。実際にその時の映像がありますのでご覧ください。これは2015年10月にNBCユニバーサル・エンタテインメントジャパン様と合同で実施させていただきました。
岩元
衣料品の綿から、バイオエタノールを作ったんです。今はバイオジェット燃料も開発が終わりましたので、来年の4月にはバイオジェット燃料でJALの飛行機が飛ぶんです。(会場から驚きの声) そうなんです、そんな企画が決まっているんですよ。いらない服を集めてつくったバイオジェット燃料で、来年の春に飛行機が飛びます。

そして今日の本命の話は、ポリエステルですね。全世界で生産される服の6割前後はポリエステルです。これをまた、新たなポリエステルに変換して服を作っていきましょうという技術開発に成功しまして、工場を建てました。そして、一緒にコラボさせていただきたいなと、スノーピークさんにお声がけさせていただきました。今日私が着ている服がまさにその商品なんですが、第1弾はTシャツ、第2弾はこのホールガーメントの製品まで実現させていただきました。

技術的な話ですが、このリサイクル技術は、循環をずっと続けても劣化しないんです。まず服があって、それを化学的にリサイクルした後にペレットができます。それから糸ができて、新しい生地ができます。ペットボトルもそうなんですが、普通はリサイクルというと1回できれば充分と考えられていますが、この技術は化学的な特殊技術により劣化することなく10回でも、100回でも、1000回でも、理論上はリサイクルできる。ボロボロになって「もう着ないや」という服になっても、回収ボックスに入れていただくと、当社の工場でザラメのようなペレットにリサイクルし、それで糸を紡ぎ、生地を織って、また製品に生まれ変わるんです。

原材料となる再生ポリエステル樹脂(ペレット)

再生ポリエステル樹脂を細く引くとポリエステル繊維になる

岩元
そうして完全な循環型社会を作ることにより、どういう効果があるのかというと、新たな石油の使用料が減ることで、それに比例して二酸化炭素の排出量も削減することができるんです。
 
さらに一番の、究極の目的は、戦争やテロを無くしたいというのがあります。戦争やテロの原因というのは、地下資源の争奪なんです。世界で起きている戦争の6~7割は石油の利権で争ったり、金鉱脈を争ったりして起こっているといわれています。そのため、この究極の循環型社会ができると、環境もそうですが、戦争やテロの原因となる問題の根幹が解決する可能性も秘めています。そうして平和な世界に近づく。そんな思いで技術開発や工場建設、コラボでの商品開発をして、それを皆さんにご提供する。こういう究極の社会が出来たらいいな…と。長くなりましたが、以上を一生懸命させてもらっている会社であります。
日比
いつもながら、熱いトークをありがとうございます(笑)。

意気投合した出会いの日

日比
今、僕たち日本環境設計の思いを岩元から伝えさせていただきましたが、そんな中で山井さんに質問です。当社との出会いは、いつごろ、どういう経緯だったんでしょうか。
梨沙
私が岩元会長に初めてお会いさせていただいたのが、今から3年ぐらい前の冬です。新潟がちょうど、ものすごい大雪に見舞われた日でした。私はここの本社で初めてお会いさせていただいたんですけど、社長の山井とは5年ぐらい前にお会いされていたんですよね。
岩元
そうですね、2015年ぐらいですね。東京で「ぜひ、私の話を聞いて欲しい」と、1時間だけ時間をいただきました。それで話をさせていただいて、30分ぐらい経ったところで、山井社長は「もう話はわかりました」と、いきなり握手を求められた!ってそんなイメージの出会いだったと記憶しています(笑)。「岩元さんはすごい。一緒にやりましょう。」って。
 
それから技術開発がようやく終わって、その後に工場建設が終わり、2017年12月にもう一度、工場の話をしにここにお邪魔させていただきました。

2017年12月、スノーピークHeadquartersにて。(左から、山井梨沙、岩元美智彦氏、山井 太)

梨沙
そうですね、12月でしたね。私はそのとき初めて、岩元さんにお会いさせていただいて「世界平和のためにリサイクルが必要だ」という話をお伺いして、本当に感銘を受けました。我々、自然を相手にする企業の人間でも、ごく当たり前にペットボトルを使いますし、もちろん衣服をつくるのにポリエステルを使う立場で仕事をさせていただいているんですけど、その世界平和のところまで、到底考えられていませんでした。

すでに世の中に再生ポリエステルというものはあって、今は当たり前のように聞くようになったんですけど、さっき岩元会長がおっしゃった通りで、大抵は1回のリサイクル。2回目にリサイクルにかけると原料自体が劣化してしまって再生できないんですよね。それが半永久的にできる、循環社会のために本気で取り組まれて、技術開発しているという。本当に素晴らしい企業だと思います。日本だけではなくて、世界を変えられる企業が日本から出てきたんだなと、本当に感銘を受けて。社長同様に、これは絶対一緒にお取り組みをして、スノーピークのユーザーの皆さんにお伝えしていかなきゃいけないなと思いました。今回、第2弾のコラボレーションが実現したことを大変うれしく思っております。

“日本だけでなく、世界を変えられる企業が日本から出てきたんだなと、本当に感銘を受けました。”

岩元
そうですね。既存の再生ポリエステルのほとんどはペットボトルからできているんですね。ペットボトルの原材料と服のポリエステルの原材料は同じなんです。ポリエチレンテレフタレートという原材料で、樹脂はザラメみたいなんですね。これを細く伸ばすと糸に、膨らますとペットボトルになります。今、多くのリサイクルは、このペットボトルを集めてきれいに洗って、それを小さく砕いて、溶かしてからペレットにして糸を引くんですけど、1回だけなら服にできるんです。では、その服を着なくなったら、次はどうするんだという問題になりますね。その服を燃やしてしまうのか。いえ、もう1回回収させていただいて、それをまた原材料にして服を作る。これがグルグル回り続けることが、これからのメーカーのあるべき姿じゃないかなと思ったんです。

それを山井社長に相談しに行くと「そうだ、それをやりたい」とおっしゃっていただき、意気投合したのが2015年。それから5年が経ち、今年はTシャツ、それからホールガーメントとして製品化していただきました。ですから、スノーピークさんと取り組みをさせていただいているこの仕組みは、本当に“究極のリサイクル”と自負していますので、ぜひこの商品を買っていただきたいと思います(笑)。

共同開発製品第2弾「HQ WHOLEGARMENT」シリーズ。ポリエステル100%の速乾性を備えつつ、コットンのような風合い。現在は一部直営店のみでの販売。

環境のため、世界のために、メーカーとしてできること

岩元
実は洋服って、ほとんどが家庭のゴミ袋に入れられた後、焼却されているんですよ。一部、中古市場へ流通されますが、結局最後は取れないシミが付いたり穴が開いたりしますよね。それらをもう一度お店に持ってきてもらって、回収ボックスに入れてもらえたら、1年もすると、また新品の服に生まれ変わって店頭に並ぶ。こういう取り組みは、自然を愛するブランドであるスノーピークさんがやるべきことだと思いますし、環境にも配慮しているブランドとしても一番似合うんじゃないかなと思ってですね、今ここに至ったという感じです。
梨沙
ありがとうございます。今回、私の強い想いとして、他社製品でもスノーピークの店頭で回収させていただきます。世の中のペットボトルや、ポリエステルの服が日本環境設計の再生ポリエステルにすべて変わったら、ゴミが出なくなりますよね。
岩元
そうです。ゴミという言葉がなくなっちゃう。
梨沙
そうですね、ゴミ捨て場のペットボトル・燃えるゴミ・燃えないゴミという分別に、ペットボトルというのがなくなるかもしれないです。
岩元
本当、本当。再資源化できますので、また別の形で回収がスタートする日がくるといいなと思いますね。
梨沙
洋服というのは、在庫になって廃棄になったり、その後、着れなくなったりした際には、たぶんほとんどのものが、再生されずに燃やされている。それでまた二酸化炭素が出たりとか、環境に負荷がかかっています。いらなくなった衣服は回収ボックスに入れていただくという意識をみんなが持てたら、世の中が良くなっていきますよね。


 

後編に続く) 
 

岩元 美智彦
いわもと・みちひこ/日本環境設計株式会社 取締役会長。繊維商社で営業マンとして、長年ユニフォームの生産・販売を担当。着古された後は大量のゴミにしかならない商品づくりに課題を感じ、2007年1月日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。数年前にキャンピングカーを購入し、週末には泊りでキャンプを楽しむ日々も過ごしている。
 
 

photography:Hideyasu Takizawa(Snow Peak)

※ホールガーメント® は株式会社島精機製作所の登録商標です。
 

スノーピーク一部直営店にBRINGボックスを設置しています。不要になった洋服や、役目を終えたテントなど、ぜひお持ちください。
詳細は「SNOW PEAK ReCYCLE PROJECT.」特設サイトにて。