スノーピーク 山井梨沙×日本環境設計 岩元美智彦 特別対談服から服へ。テントから服へ。(後編)

SNOW PEAK ReCYCLE PROJECT. 本格始動。
持続可能なものづくりを、もっと身近に、たのしく。

スノーピークは、再生繊維の開発・製造、リサイクル事業等を手掛ける日本環境設計との共同開発製品第1弾「BRING T-shirt」を5月に発売し、同時に一部直営店にて不要になった繊維製品の回収も開始しました。さらに10月には第2弾として自社製造のニット製品「HQ WHOLEGARMENT」を発売しました。これを記念し、スノーピークHeadquartersで開催した「雪峰祭2019秋」にて、株式会社スノーピーク 代表取締役副社長 CDO 山井梨沙(以下 梨沙)と日本環境設計株式会社 取締役会長 岩元美智彦氏(以下 岩元)の特別対談を行いました。

ファシリテーター:日本環境設計 日比 伸一郎氏(以下 日比)

“今後はテントの生地や他のポリエステルの織物も、取り組んでいきたいなと思っています。”

服から服へ。テントから服へ。

岩元
よく聞かれることは、「再生してできた商品って品質はいいの?」という質問です。これも私がいくら「良いですよ」と言っても説得力がない。弊社の再生繊維は大手の一流スポーツメーカーにも採用されているんです。急乾、速乾、UVカットや透け防止などの高性能な生地をつくるのに、異形断面という手法を採用して高機能な糸が引けるんです。今までのペットボトル再生の技術では、すべての再生糸にこのような高機能な仕様をつけるのは難しかったんですが、我々のこの技術は、化学的にリサイクルをしているので最先端の高機能な糸が引ける。だから服になっても、急乾、速乾機能がついていますので、洗濯したあとも乾きやすいです。

皆さんぜひ手に取って、一度着て、洗濯をして、実感してください。着心地の良さを実感していただけると思います。
梨沙
今回作っていただいた高機能な糸を、セーターの形に、ホールガーメントという日本の技術を使って作らせていただいています。スノーピークでホールガーメントの編み機を購入して、ここHeadquartersに設置しました。皆さんから不要になった服を回収して、糸になったものを、特殊な機械がこの状態(服)で編んでくれるんです。普通の洋服って1枚の生地から、袖や身頃の形に型紙に沿ってカットして作られるので、絶対ゴミが出るんですよ。
岩元
残念ながら無駄になってしまう部分が3割ぐらいあると言われていますが、このホールガーメントは出ないんですよね。

オープンファクトリーとして公開している、本社屋に導入した島精機製作所の編み機。一着丸ごと立体成形を行うため、生地の裁断や縫製といった処理の必要がなく、原料ロスを出さずに必要最小限の資源で服を仕立てられる。

梨沙
出ないですね。ホールガーメント編み機ではこの洋服を作るのに必要になる、袖は袖で糸を使って、身頃は身頃で必要な分だけの糸を使うんです。端材というか、カットした隙間のゴミというのは、出なくなります。今回はリサイクル衣料を原材料に採用することで、より無駄を出さないというのをわかりやすくお伝えしたかったのですが、今後はテントの生地や他のポリエステルの織物も、取り組んでいきたいなと思っています。
岩元
そうですね、将来的にはテントをリサイクルしてやりたいなと思って今、努力中でございます。しばし、お待ちください。
梨沙
ありがとうございます。テントも無駄になる生地の量がすごくて。うちには「ランドロック」というかなり大型のテントがあるんですけど、あれに使用する生地のメーター数、60mくらいあるんですよ。
岩元
すごいですね。約一反強使うんですか?
梨沙
そうなんです。パーツ1つ1つが、カーブもかかっていますし大きいので、それこそ端材を、毎回めちゃくちゃ出しながら作らなければいけない状況で。その端材もリサイクルできるようにしていきたいんです。60m用尺の生地の3割がゴミになるって、もったいないですよね。
岩元
そうですね。そういうのもこれから技術開発が進んでいきますので、いい原材料になると思っています。
梨沙
日本環境設計の皆さまの今後のお取り組み、技術開発を楽しみにしたいと思います。
岩元
弊社のホームページを見ると、いろんな取り組みとか、工場や技術開発がここまでできましたというのが、載っています。工場は今、北九州は繊維と携帯電話のリサイクルをさせてもらっていまして、川崎に世界最大級のペットボトルのケミカルリサイクルの工場を持っています。そこの生産能力が約24,000トンぐらいですね。海外は、2021年を目標にフランスに開業したいなぁと思っています。ヨーロッパの次は、アメリカかなと思っていますので。スノーピークさんの後を追いかけながら、工場を作ってですね…
梨沙
いえいえ(笑)。

“一番大事なのは、リサイクル後にメーカーがそのリサイクル素材を用いて素敵な商品を作ることなんです。”

リサイクルの要は、商品の魅力

梨沙
大手企業さんともお取り組みされているじゃないですか。無印良品さんとか、adidasさんとか。そういうところとお取り組みされると消費者の母数も大きいですし、本質的に理解して行動を起こせる消費者へと、どんどんつながっていくといいですよね。
岩元
そうですね。僕は思うんですけど、リサイクルってペットボトルの回収とか、服の回収も大事なんですけど、一番大事なのは、リサイクル後にメーカーがそのリサイクル素材を用いて素敵な商品を作ることなんですね。商品が素敵じゃないと、「再生だから、環境にいいから、買ってください」では、買ってもらえないんですよ。素敵な商品があって、それが環境の素材であってというのが一番なんですね。

ですから、スノーピークさんは素晴らしい素敵な商品をどんどん開発して、それを消費者に提供することによって、リサイクル材が循環される仕組みができておりますので、それでグルグル回っていきます。リサイクルによってサステナブルな社会にしていくためにも、素敵な商品の開発に注力していただきたいと私は思います。
梨沙
がんばります。
岩元
(ホールガーメントを指して)こういう素敵な商品を、今回作ってもらったんですけど。僕はこれ、一目ぼれだったんです。
梨沙
ありがとうございます。

共同開発製品第2弾「HQ WHOLEGARMENT」シリーズは、立体成形ならではの着心地の良さが魅力。現在は一部直営店のみでの販売。

岩元
夏ぐらいに「こういう商品を出すんだ」とサンプルを見せてもらったんです。めちゃめちゃ素敵じゃないですか。「これ欲しい、買う」と一目ぼれしました。そしたらホールガーメントを使っていると聞いて、1時間に1着ぐらいできるんですかね。
梨沙
そうですね。1時間に1着。
岩元
機械が作ってくれているんですけど、こういう素敵な商品が世の中に出ていくと、リサイクルも回るということで、商品の素敵さがリサイクルの要であることは間違いないです。ぜひよろしくお願いします。
梨沙
そうですね。「リサイクルされたものだから買う」という意識も大事なんですけど、それを感じさせないぐらい商品に魅力があるものにしたいですね。手に取ったらそれがリサイクルだった。
岩元
それが一番カッコいいじゃないですか。そういうリサイクルとファッション性が両立した取り組みを、ぜひぜひリードして欲しいなと思いますし、私どもも、どんどん技術を高めて、いろんなものがグルグル回るような技術を開発していきたいなと思います。
梨沙
楽しみにしております。

リサイクルは、ワクワク。

日比
僕もスノーピークさんのファンで、今着ているTシャツも第一弾に作られたもので、今履いているホールガーメントも、まだ僕らの糸ではなかった頃から着させていただいているものです。普通だったら、前身とか横身とか、縫い合わせなきゃいけなくて、立体の形なんか出ないんですけど、ホールガーメントは、本当に人の形に編み上げられて、機械からそのまま出てくる。実際に畳んでもらうとわかると思うんですけど、立体なのでうまく畳めません(笑)。そのくらい無駄もなく、人の体に寄り添うとか、機能も優れていると思うんですね。こういうものを皆さんに提供して、皆さんにも着古したり、使い古したものを持ってきていただいて、次の世代に託していくというのが、今後の狙いだと思っています。

そんな中で、山井さんへの最後の質問です。スノーピークさんのユーザー様に、これからリサイクルで服作りに参加していただくということで、何かお伝えされたいことはありますか。
梨沙
はい。スノーピークのユーザーさんには、アウトドアパーソンとして、環境のことや自分と一緒に暮らす人のことを考えられる方が多いと思っています。何を選んで、何を購入するか、いろんな選択肢がある中でスノーピークを選んでいただけているということは、高い意識を持って生活し、自然と関わられている方たちだと思いますので、これをもっとたくさんのお友達にお伝えいただけたら。世界では、海面が上昇していて、生き物は温暖化によってプランクトンが大量に発生していたりとか、環境破壊が起こっていること。原理原則をさかのぼって考えて、モノを選べる人をお友達にも増やしていただきたいと思います。

あと、岩元さんから学ばせていただいたことが、一つありまして。岩元さんって、いつもニコニコしていらっしゃって、すごく楽しい方なんです。リサイクルに対しても深刻にならずに、「みんなで洋服集めて、リサイクルして、世界がハッピーになったら最高じゃない、ワクワクするよね」っていう。
岩元
そうそうそう。
梨沙
そういう素敵なエネルギーを持たれている方なんですよ。「環境は今こうなっている、我々はそれに対して何ができるだろう」って、深刻に考えるんじゃなくて、ワクワクしながら、自分の一つの行動が、世界を、環境を良くしていけるという想いを、多くの方に持っていただきたいなと強く思います。
岩元
環境は楽しくないと、伝播しないんですね。だから、最初はデロリアンを動かして。来年はJALさんと飛行機を飛ばす。両方とも皆さんから回収した服を原料に作ったバイオ燃料を搭載しているんです。
梨沙
本当に、ワクワクするお話です。
岩元
ぜひ、循環型社会を楽しんでもらいたい。それで、来年の春「飛行機を飛ばそうぜ」と面白いことをやっているんですけど、これはみんな参加型なんですよ。みんながリサイクルに参加すると、リサイクルのことが自分のことになって、それでまたリサイクルの知識とか、意識が高くなっていくということがすごく大事なんですね。そのワクワクの延長線上というか。

ワクワクと一緒で、商品も楽しい。いい商品はワクワクなんです。だから、メーカーさんにはいい商品を作って、ワクワクを提供してほしいなという風に思っています。
梨沙
ありがとうございます。ワクワクできる商品開発、ワクワクできる技術開発、ここが合わされば最強だと思っていますので。皆さんも一緒にワクワクしていただきながら、リサイクル、商品開発に。ユーザーさんとスノーピークの関係性で、これからどんどん発展していければうれしいなと思います。
日比
どうもありがとうございます。今、聞いていただいたとおりで、皆さんの愛するアウトドア用品やアウトドアのウエア、こういったものが循環します。自分たちが使い古した後に捨てることなく、修理をしたり、長く使っていただいて、どうしてもお役御免になった時には、僕たちのBRINGボックスにどうぞ入れてください。それが皆さんのところに戻ってきたり、次の世代に受け継がれていく。このようなことを一緒に取り組めれば幸いだと思っています。今日はありがとうございました。
岩元・梨沙
ありがとうございました。
 
 

岩元 美智彦
いわもと・みちひこ/日本環境設計株式会社 取締役会長。繊維商社で営業マンとして、長年ユニフォームの生産・販売を担当。着古された後は大量のゴミにしかならない商品づくりに課題を感じ、2007年1月日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。数年前にキャンピングカーを購入し、週末には泊りでキャンプを楽しむ日々も過ごしている。
 
 

photography:Hideyasu Takizawa(Snow Peak)

※ホールガーメント® は株式会社島精機製作所の登録商標です。

スノーピーク一部直営店にBRINGボックスを設置しています。不要になった洋服や、役目を終えたテントなど、ぜひお持ちください。
詳細は「SNOW PEAK ReCYCLE PROJECT.」特設サイトにて。