【パナソニック対談】from PARTNER「野遊びのある未来の暮らし」を語ろう。-後編-

Prologue

Snow Peak USAとパナソニックFUTURE LIFE FACTORY(以下FLF)が取り組む「Future Life with Noasobi」。自然と人の関係を探求し、誕生した11のアイデアを、2023年3月、ニューヨークのSnow Peak Brooklynでユーザーの皆さんに発表しました。

FLFの井野さん・小川さんとSnow Peak USAのYuiの対談後編は、たくさんのお客様から多くの刺激をいただいた、お披露目会の様子からスタートです。

◇ブルックリンでの価値あるリアクション。

2023年3月、Snow Peak Brooklynでローンチパーティーを開催した。

――ブルックリンでのお披露目会は、どうでしたか?

Yui:
「すごく反応が良かったですね。予約制としましたが、途中から予約なしでも入場できるようにして。予約なしで来てくれた人は『何か、未来のことが起こってる』と感じてくれたのかもしれません」

小川:
「11個のプロダクトのコンセプトを全部説明すると30分ぐらいかかるんですけど、急に来た方も30分じっくり聞いてくれたりして、すごく興味を持っていただけたんだろうなと思いましたね」

井野さん:
「印象的だったのは、僕の『KANADERU』というアイデアに対して『子どもが何か外でものを拾ってきても、これなら親も怒らなくて済むね』って言ってくれた人がいたことです。子どもが落ち葉や石を拾うのは世界共通。それを見て、大人は自然とのつながり方を学び直した方がいいのかも」

Yui:
「『reconnect(リコネクト)』というキーワードは、子どもの時のようにもっと自然を近くにつなぎ直すっていう意味合いでもありますね」

「KANADERU」。石や枝、花などをカメラで画像認識し、形や色で割り当てた音色が並べた順に再生される。

小川:
「僕はこのプロジェクト全体に対して『すごく感覚的だね』と言われたのが心に残っています。かつてアナログだったものが今はデジタルになっていて、これからはまたアナログ的な感覚がすごく大事になるんだろうと感じましたね。

”DIVE”と”PLAY”を循環するようなものを意識してプロダクトを作っていて、アナログに戻すことはあまり重要視していなかったんですけど。でも、今回のプロダクトすべてに共通して言える大事なことだなと、お客様から教わりました」

Yui:
「”PLAY”って言葉の『遊ぶ』の中には、『学び』の要素がすごく入っているっていう話も出ましたね。僕らはもう子どもじゃないので、ただ無邪気に石を拾って遊ぶこともなかなか難しいじゃないですか。

でも、それをすることで何が起こるかとか、何でそういう気持ちになっているかを分析して、どんな意識が広がるか、何を学べるかを知るきっかけを、今回作ることができたと思います。

自然を現代の人間の暮らしに取り入れるテクノロジーだったり、仕掛けやデザインだったり、知的好奇心を刺激する遊びの道具を作ってもらって、それに対してブルックリンのユーザーさんたちが好反応を示してくれましたね」

◇それぞれの気づきと変化。

「自然を無理矢理暮らしに取り入れるのではなく、人がおのずと自然へ行きたくなるものをつくりたかった」と小川さん。

――改めて、今回の取り組みを振り返ってみるとどうでしたか?

井野:
「FLFはいつも未来的なことをやっているので、今まではメカテクノロジー寄りになることが多かったんです。でも今回は、いわゆる家電っぽくない見かけというのにもこだわりましたね」
 
小川:
「一見クラフトっぽいんだけど、内側にはしっかりテックが入っているという」

井野:
「なるべく自然の素材を使って。『YURAGU』の『たねほおずき』も、ちょっと改造して、竹とかヒノキとかでシェードを作ってみたり。個人的に考えていたのは、これからはデザイナーとしても変わらなきゃいけないんじゃないかということ。自然のものを使う方が自然に優しくなれるし、大事に使うし。デザイナーとして、そんなメッセージも込めています」

「YURAGU」。たねほおずきを模した加速度センサーが風を感知し、その揺れによって家の中の照明がゆらぐアイデア。

Yui:
「僕はこのミーティングが始まってからブランド統括になったんですが、アメリカのブランドメッセージを『スノーピークは日本のキャンプブランドです』と明確に言うように変えたんです。

今まであえて言ってこなかった『このスタイルは日本的な自然観に基づいてデザインされています』ということを、この取り組みをきっかけに言っていこうという意識になりました」

小川:
「それはいいですね! 私は今回得た知識と考え方を、パナソニックの社員全体でも共有できたらと思っています。というか、そういうことができるのがFLFの活動なんです。

環境に関する事業はお金がかかる、手間がかかるとか、そういうことじゃなくて、それによって付加価値ができるということをプロジェクトを通じて感じたので。社会にとっていいこと、すごく価値になることなんだよって、これから伝えていくのが僕の役割なのかなと感じています」

◇環境を考え、学び、形にしていきたい。

自然とのつながりを考え、試行錯誤した1年の取り組みがそれぞれに変化を与えた。

――FLFのメンバーの任期は基本2年間ということで、この春からお二人はそれぞれご異動されたんですよね。この取り組みで得たことが、今後のものづくりにも反映されるのかなと勝手に想像したのですが…。

井野:
「それはすごく活かされると思います。一回、自然のほうに思考を振り切れたので。たぶん、何か新しいことがやりやすい体になってくると思いますね」
 
Yui:
「これだけ深く話し合ってきた方々とは、これからどこの部署に行かれても、どういう形でも、また何か一緒に成し遂げられるのではないかなと思います」

井野:
「パナソニックで持っている素材をスノーピークさんに紹介したりとか、そういう新たなつながりもさっそく生まれたり。ここから間接的にモノが生まれていってもうれしいですね」

小川:
「一回、一緒に共通の未来を見てきたので、改めて今のあるべき姿を考えていくのもおもしろそうですね。それぞれが別の場所で見てきたものを、何かしら還元できるんじゃないかな」

井野さんはアメリカで現地の子どもが落ち葉を拾い集める様子を見て「自然の中で何かを拾いたくなるのは世界共通」と確信したそう。

――これで終わりじゃなくて、まだまだ、これからも何か続きそうですね。

Yui:
「そうですね。特に、環境への取り組みは一回アウトプットすれば終わりじゃなくて、ずっと考えながら生きていかなきゃいけない問題です。だから楽しい方がいいし、学ぶ意識があった方がいいと思うので、これからもこういうクリエイティブを続けていきたいですね。

例えば、スノーピークの住箱で『Future Life with Noasobi』を体験できるようにしようとか、そういうアイデアも出てきましたよね。その希望もまだ捨てません(笑)」

小川:
「『野遊びのある未来の暮らし』を楽しめる、宿泊体験ですね」

井野:
「『“reconnect”ホテル』なんていうのができたらいいね、って話してましたよね。近い将来、実現するかも…? 楽しみです!」

Yui:
「僕らとのミーティングも、継続していけたらと思っています。引き続き、よろしくお願いします」

Epilogue

Snow Peak USAとFLFが取り組む「野遊びのある未来の暮らし」、いかがでしたでしょうか。

環境問題に端を発した今回のプロジェクト。個性豊かなプロダクトの数々に触れ、もっと自然との距離を縮めたい、もっと自然を愛したい、そう感じる人々が増えることで、自然に優しい持続可能な未来が見えてくるかもしれません。
 
自然と人をつなぎ直すきっかけを、ぜひ私たちと一緒にキャンプフィールドや暮らしの中で楽しみながら見つけていきましょう。

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東京ミッドタウン・デザインハブで開催中の企画展「Design Beyond - あたらしい世界のためのデザイン - 」にて、FUTURE LIFE FACTORYの活動紹介の一つとして、今回の取り組みで生まれたアイデアの一部も展示されています。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

■企画展 「Design Beyond - あたらしい世界のためのデザイン - 」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー 5階)
会期: 6月16日(金)~7月30日(日)11:00~19:00(入場無料)
https://www.designhub.jp/exhibitions/8880