【コラム】 from STAFF愛着図鑑 vol.17

【愛用歴7年】
ヤエンストーブ レギ

愛用のレギ。きっと誰よりも使っているという自信があります。何しろ発売当日に買って、それからずっと使い続けているので。

大学生の時、アルバイトしていたアウトドア用品店に入荷して、品出しをした瞬間に一目ぼれ。広げる時のギミックや組み立てた状態が、ものすごくかっこよくて、学生にとっては高価な買い物でしたが奮発して買いました。

それには理由があって、実はそのとき、日本一周の自転車旅に出ようとしていたんです。もともと本が好きで、中でも夢枕獏の「神々の山嶺」や石川直樹の「いま生きているという冒険」、沢木耕太郎の「深夜特急」などの旅行記が好きで、その世界を自分の目で確かめたいと思っていました。

レギを買い、2カ月後に出発。京都から太平洋側に出て北上し、青森の先端まで行って日本海側を戻ってくる本州一周です。8月末から11月まで大学を休んで、2,000キロ以上を走りました。

貧乏旅行だったので、食事は基本的に自炊。お米を炊くのも、おかずを作るのも、レギ1台で済ませていましたが、ゴトクの安定性は抜群。火力も結構強くて調理しやすく、コンパクトに畳めて、かさばらない。本当にこのレギに支えられました。

道中、自分の誕生日の夜には、レギでフルコースを作りました。ご飯を炊いて、ポトフを作って、ステーキを焼いて、付け合わせの野菜も焼いて。

僕のレギ史上、一番頑張った日かもしれません。その日は夜が冷え込み、最初に作った料理から冷めていくので、順番に火にかけて温め直しながら食べたのをよく覚えています。

10月に青森に着いた頃には、夜は氷点下になることも。そんな時はレギの火にかじかんだ手をかざして温まり、熱源としても重宝しました。

その自転車旅から、ずっとレギを使っています。今は車もあって、ギアも増えて、大きめのバーナーも持っていますが、ちょっとお湯を沸かすとか、朝起きてコーヒーを飲むような時に持ち出すのは、やっぱりレギです。サイズは一番小さいけれど存在感は一番大きい、相棒感の強いギアですね。

だいぶハードに使ってしまって、歪みや汚れがいくつも付いています。例えば、バーナーヘッドの受け皿にできた歪みは、旅の途中、峠道でハンガーノック(極度の低血糖状態)に陥って目の前が真っ暗になり、自転車ごと転んだ時についたもの。

直感でエネルギー切れだと気づき、よろよろと起き上がって、山を下ってスーパーで分厚い肉を買って米を2合炊いて、めちゃくちゃ食べました。この歪みを見ると、今もその時の記憶が鮮明によみがえります。

店頭に立っている今、かつての僕と同じように旅目的でギアを買いに来る若い人と出会うと、自分と重ねてしまいますね。「頑張って」の気持ちを込めて、自分の経験を話すこともあります。

「ちょっと高いけれど、その話を聞いたら…」と、レギを買ってくれた学生さんもいました。あの時の彼にも、いい相棒といい時間を過ごしてほしいと思います。

Epilogue

いかがでしたでしょうか。長く使ってきた道具とあなたが織りなす時間は、どんなに優れた新製品を買っても手に入ることはなくて、その時間を、人は「愛着」と呼ぶのだと思います。

新潟・福岡にあるアフターサービスルームには、今日も遠方から修理の必要な道具たちが届きます。壊れたら捨てるのではなく、大事になおしてまた使って欲しい。そんな想いを込めて今日も丁寧に修理にあたっています。

もしも、道具が壊れたらいつでも私たちスノーピークにお送りください。想いを込めて修理し、皆さまにお戻しいたします。

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