【事例】from STAFF「URBAN OUTDOOR」な街づくり。

Prologue

もともと日本の家は、広い庭があって木が茂っていたり、縁側でひなたぼっこをしたりと、生活のなかで自然を感じられる造りでした。しかし、住みやすさを追い求めるうちに壁や屋根は強固になり、だんだんとご近所の関係も薄まり、戸外との距離は遠くなっていきました。

スノーピークでは、全国の工務店やデベロッパーと新しい住空間作りにチャレンジしています。庭やベランダなど外部のスペースを広く作り、そこにテントを張ったり、家族や仲間とガーデンパーティやバーベキューができる場所を備え付けたり…。暮らしながらに自然を味わえる工夫がされた住まい。その取り組みをご紹介します。

ご近所との関係が薄まる現代の住環境。

キャンプをする人ならきっと共感いただけると思うのですが、自然豊かなキャンプ場で過ごしていると、他のキャンパーとあいさつを交わしたり、作り過ぎた料理をおすそ分けし合ったりという交流が自然に生まれます。たまたまキャンプ場で出会った家族同士の付き合いが、それから長く続くこともあります。

一方、現代の住環境に目を向けると、地域のコミュニティは衰退し、近くに住んでいる人同士があいさつを交わさないのも珍しいことではありません。

そんな住まいやコミュニティの課題を解決する取り組みとして、スノーピークではアーバンアウトドア事業を立ち上げ、2018年からは街づくりの監修も行っています。

「つながる街」をテーマに設計された新しい住宅街。

スノーピークがまちづくりに最初に携わったのは、新潟市につくられた「天野エルカール」という新しい住宅街です。そこはもともと5階建てのアパートが4棟立ち並んでいた場所でした。かつては160世帯が暮らし、敷地内の集会場や遊び場も賑わいを見せていたそうですが、近年は建物の老朽化とともに20数世帯までに減少していました。

そこで、アパート1棟だけを残し、残りの3棟を解体。そうしてできた敷地に新しく作った29区画の分譲地を地元の不動産会社さんが販売をするにあたり、かつてここの住人同士が交流を楽しんでいた時代のような「人がひととつながる、支えあう。どこか懐かしい街。」をコンセプトに据えることにしました。

このコンセプトを体現するために、私たちスノーピークでは、大きく3つの方針を掲げました。

Point.1 「ゆとりの敷地にコンパクトな住まい」

敷地いっぱいに家を建てるのではなく、土地に対して家を小さめにして、庭やウッドデッキなどのアウトドアリビングを充実できることを意図しています。

Point.2 「境界線のない連続する街並み」

お隣との境界線に塀や柵を建てて隔てるのではなく、全体で土地を共有するような街並みを目指しました。

Point.3 「人が集まり、つながる場」

住人同士が交流を楽しめるように、多目的広場を設けることにしました。

この3つの方針に基づいて、さらに細かいルールを設けさせていただき、それに賛同したビルダーさん10社が参加して街づくりを進めて行くことになりました。

住民が集えるコミュニティスペース。

また、コミュニティづくりのための仕掛けとして、広場にモバイルハウス「住箱-JYUBAKO-」を設置し、4家族ほどがバーベキューを楽しめるような共有のアウトドア道具を入れています。広場内には焚火スペースを設け、天野エルカールの各住宅用に開発したオリジナルのタープを住人が持ち寄って、大きな日陰をつくれるように設計しました。

各住宅には、スノーピークのタープやテーブル、チェアなどを活用して、アウトドアリビングを楽しめることを設計に取り入れていただいたのですが、より快適に過ごせるように各ビルダーさんと一緒にプランニングを考えていきました。そうして、スノーピーク製品がフィットするシステムデザインされた10通りの「野遊びのある家」が出来上がりました。

アウトドアは豊かなコミュニティづくりにも貢献する。

2018年の春、3週間に渡って天野エルカールで住宅祭を開催しましたが、週を追うごとに来場者が増えていきました。この時に建築された住宅のいくつかは販売を行っていましたが、住宅祭の期間中にそのほとんどが売れたんです。

予想以上に大きな反響をいただくことができ、スノーピークが提案する「野遊び」を住まいに取り入れる暮らしに、多くの人が注目していることが分かりました。

その後も、パークタワー晴海(東京都中央区)、山形エコタウン前明石(山形県山形市)でパートナー企業様と協業しながら、マンションの共用部や街づくりの計画を行ってきました。アウトドアを取り入れることで、住人同士が自発的に交流を行うことが実感できました。

コミュニケーションをする上で背中を押してくれる「アウトドア」の魅力を、アーバンアウトドア事業を通して多くの人に伝えていきたいです。

Epilogue

いかがでしたでしょうか?自然と都市、どちらにも緑はあり、風は吹き、空は広がっています。庭やベランダ、公園や並木道でも、急ぎがちな都市生活を、自然のリズムを感じて生きる。それが、スノーピークの考える「アーバンアウトドア」です。

都会で暮らしている方や、周りには自然がないと思っている方も、ぜひ身近な自然を探してみてくださいね。きっと今まで以上に豊かな日常に出会えるはずですよ。