【生産者】 from PARTNER生産者を訪ねて vol. 3

Prologue

スノーピークでは、都市型レストラン「Snow Peak Eat」と、地方型レストラン「Restaurant 雪峰」を運営しています。

私たちが大切にしているのは、生産者の想いとともに料理をご提供すること。そのために生産者の元へ訪ね、時には収穫のお手伝いをしながら、食材の特徴や調理方法などを聞き、料理に反映しています。

今回、「Restaurant 雪峰」のシェフ土門が訪ねたのは、合同会社一一(かずいち)の田中美央さん。新潟県三条市の下田地区でウコンを栽培し、商品開発などを通して雪国で育ったウコンのPRに取り組んでいます。

同じ下田で食に携わる、同世代の仲間である田中さん。改めて話を聞いてみたいと思い畑に伺うと、これまでの経緯やこれからの展望、栽培のいろはを教えてくれた師匠への想いを教えてくれました。

◇はじまりは、一人の生産者との出会い。

鼻に抜けるさわやかな香りが、料理の味を引き立てるスパイスにぴったりなウコン。当社で開催したファーマーズマーケットがきっかけでスタッフがつながり、田中さんとの縁が生まれました。名人から栽培を受け継ぎ、ブランド化を目指して邁進する姿にいつも刺激をもらっています。
 
旅行会社での勤務を経て、2016年に三条市の地域おこし協力隊のメンバーとなった田中さん。特産品を紹介するパンフレット作成を担当したことがきっかけで、下田産ウコンの存在を知ったと言います。

あざやかな黄色のウコン。見た目はショウガに似たかたち。

田中さん:
「ウコンといえば飲み会の時にお世話になることはありましたが…(笑)。知識とかはまったくなく、『ウコンって何?』という状態でしたね」

その際、道の駅のスタッフから紹介されたのが、当時既に85歳を超えていた、この地域におけるウコン栽培のパイオニア・山崎一一(かずいち)さん。この出会いが田中さんにとっての大きなターニングポイントとなりました。

田中さん:
「謙虚で丁寧、それでいて私たちにもフランクに接してくれる一一さんの人柄にすぐにひかれました。自宅にお邪魔してお茶を飲みながらたわいない会話をしたり、畑を手伝ったりする時間が心地よく、ウコンへの興味も自然と深まっていきました」

ふわふわと柔らかなウコンの葉。10月の収穫時期までに、さらに大きくなる(9月撮影)。

田中さんは地域おこし協力隊を退任後も、ウコン栽培を継続。同じく山崎さんを師匠と慕う斉藤翔さんと共にウコンを受け継ぎ、6次産業化を目指すことを決意します。

田中さん:
「一一さんのウコンを絶やしたくないという想いが一番でした。課題はたくさんありましたが、それ以上に可能性も感じていたので、栽培に加えて商品開発も本格的にスタートさせました」

◇雪国での栽培は、試行錯誤の繰り返し。

亜熱帯植物に分類され、沖縄県をはじめ主に暖かい地域で栽培されているウコン。寒さに弱いため、新潟の冬をいかに越せるかがカギとなるそうです。

田中さん:
「ウコンは秋に収穫したものの一部を種芋として保管し、芽の出た芋を春に植えて毎年つないでいく作物です。0度以下だと種芋が死んでしまったり、芽出しがうまくいかないため、温度管理には細心の注意を払っています」

現在は快い香りが特長の春ウコンと、スパイスとして料理に使うことも多い秋ウコン(ターメリック)の2品種を栽培。2021年には商品化の第一弾として、濃縮シロップを完成させました。
 
田中さん:
「2種類のウコンと数十種類の野草を混ぜ、糖蜜の甘みをベースとした濃厚な味わいに仕上げました。お酒好きの方はもちろん、お酒を飲めない方にもおすすめです!」

ウコンは、整腸作用や抗酸化作用などの豊富な薬効を持つ生薬としても広く用いられている。

ウコン畑を初めて目にした時から6年。収穫量を年々増やすなど、栽培技術は着実に向上しています。
 
田中さん:
「この地域はミネラル豊富な赤土の農地が多く、根菜類を育てるのに適しています。一一さんのウコンにはまだまだ及びませんが、こうした土地の恵みも生かしながら育てていきたいです」

◇ウコンと遺志を受け継ぎ、未来へ紡ぐ。

2020年秋、山崎一一さんは91歳で息を引き取りました。若い世代に技術を伝承するだけでなく、ブランド化に向け、田中さんたちと最後まで挑戦を続けていたそうです。

田中さん:
「誰よりも好奇心旺盛で、アグレッシブな方でした。もっと話したかったですし、聞きたいこともたくさんありましたが、今は一一さんが私たちに残してくれたものと向き合いながら前向きに歩んでいけたらと思っています」

ウコン100パーセントの飲料や入浴剤、ウコンの葉を使ったアイテムなど、今後も商品開発を進めていき、ブランドを確立していきたいと田中さんは笑顔で話します。
 
田中さん:
「ウコンって2メートル近く育つんですよ! スノーピークさんと焚火イベントを収穫時期のウコン畑でやるとか、そこでシェフが料理をふるまうとか…何か企画できたらいいですね。一一さんが30年以上愛情を注いできたウコンを絶やさず、そして一一さんの名前や生き様も多くの人に伝えていけるよう、これからも楽しく挑戦を続けていきたいです」

「CRAFT POTION」6,800円(税込)、「雪国うこんの発酵飲料 トニック」715円(税込)。

現在、Snow Peak FIELD SITE SPA HEADQUARTERSのストアにて、クラフトシロップ「CRAFT POTION」を販売中。また同施設内のSnow Peak Eatでは「CRAFT POTION」を使ったドリンクも提供しています。

師匠から託されたウコンを受け継いだ2人が、今後どんなストーリーを描いていくのか。期待を寄せると同時に、私たちもさまざまな形でコラボレーションしていけたらと思います。

Epilogue

いかがでしたでしょうか。食への想いや自然との向き合い方など、生産者それぞれの熱い想いがあります。

レストランで提供させていただく料理や収穫体験などを通して、食の大切さや自然の豊かさ、そしてその土地の魅力を、私たちスノーピークは発信していきます。