【キャンプ場開発】from STAFF自然と共生する感覚を取り戻しに、阿武町でキャンプを。

2021年秋、山口県阿武町にスノーピーク地方創生コンサルティングが監修を行うキャンプ場がオープンします。

これまで開業に向けて奮闘する町の方々や担当者の想いをお届けしてきました。
 
最終回となる今回は、阿武町の皆さんと二人三脚でキャンプ場開発を進めているスタッフ岡本が、これまでの取り組み、そしてこれからオープンするキャンプ場についてご紹介します。

人口3,000人ちょっとの阿武町。日本海と山に挟まれた美しい田舎町。

急速に進む少子高齢化・過疎化という課題を抱えながらも、若者世代の定住・移住促進のために、行政と住民が手を取り合ってさまざまな取り組みを実施しています。その一つが、「道の駅阿武町」に隣接したABUキャンプフィールドの開業計画です。

阿武町では、「まちの縁側推進プロジェクト」として、まちの玄関口である「道の駅阿武町」に隣接したキャンプフィールドとビジターセンターで構成される拠点施設の整備を計画しています。『滞在時間の延長』『消費の促進』『阿武町の暮らしを知る』ことで「人・もの・お金の地域内循環を実現し、持続可能なまちを目指すこと」を目的としています。

 
◇なぜ道の駅の隣にキャンプフィールドをつくるのか?と思われた方は、ぜひこちらを。
 
◇なぜ移住・定住促進を目的にキャンプフィールドをつくるのか?と思われた方は、ぜひこちらを。
 
◇本連載を最初から読みたい方は、ぜひこちらを。

異日常に触れる、「ABUキャンプフィールド」

まずABUキャンプフィールドの特徴のひとつとして、ぜひお見知りおきいただきたいのは、バツグンの利便性を誇る周辺環境。隣接する「道の駅阿武町」では、新鮮そのものの魚・野菜・肉が手に入り、足りないものはキャンプ場から車で1分のスーパー・酒屋で調達可能です。しかも酒屋は地元酒造、阿武の鶴酒造の直営店!ラベルも素敵な阿武の名酒が並んでいて、これがまたおいしいんです!

もちろん食材環境だけではございません。道の駅には地元住民に愛される地下千メートルから湧き出す温泉と夕日を眺められるオーシャンビューをもつ「鹿島の湯」が併設しています(サウナ付きがうれしい!)。
 
ここまでコンパクトにすべてが揃うのは、キャンパーとしても注目ポイントですよね。そんな立地に新しくキャンプフィールドができるわけです。

そう、ここまでの話でも分かる通り、国道から全体を眺められるABUキャンプフィールドは、目前にきれいな海こそあるものの、決して非日常感のある劇的な自然が広がっているわけではありません。あるのは、阿武町の“日常”。

夜明けごろに目の前を通る漁船、道の駅に集まる人々、漁網が干された港。散歩や釣りを行う人々、一息つくドライバー。ふと見上げれば目の前を走る豪華寝台列車「瑞風」、そして男鹿島と女鹿島の向こうに沈んでいく夕日…町の人からしたら何の変哲もない“日常”が広がっています。
 
ABUキャンプフィールドで行えることは、町の生活や人を感じる体験、つまり、いつもと“異なる日常”を垣間見るキャンプ体験です。
 
自然の中でゆったりと過ごすことが主流のキャンプとは少し指向が異なりますが、この立地ならではの過ごし方を満喫していただける施設にしていきたい。そんな想いでこのキャンプフィールドは計画されています。

生活を体験しながら学ぶこと。

この地域で日常を営む阿武町民の多くは、漁業・林業・農業といった第一次産業に従事しています。それはやはり、自然の恵みが豊かな地域であることの現れともいえるのではないでしょうか。

日本海に面する立地は多くの雨を呼び豊かな森を育てます。
水はけのよい阿武火山群由来の地質は、美味しい野菜や果物を育てます。

また、この地質で濾過され養分を蓄えた水が川を流れ、再び海に流れ込み、微生物を集め、海中の溶岩流が天然の礁となることで好漁場をつくりだします。
阿武町の生業は、そんな自然の循環の中にあり、私たちの暮らしは自然の上に成り立っているということを思い出させてくれます。

現代社会ではいつの間にか薄れてしまっている自然と共生する感覚が、阿武町の暮らしには現在進行形で詰まっているのです。

私自身、いろいろと教えていただく中で阿武町の魅力に興味を持ち、森での林業体験、里で牛に触れ、海では定置網漁を体験。町の人たちの生業を少しずつ体験させていただいています。そうやって過ごす中で、私が感じているどの体験にも共通する独特の満足感。この感覚は何なのか。

自身が改めて思ったことは、どの体験も自然のタイミング(陽の動きや季節や気候等)に合わせて行ない、ひとえに風景の中で自らができることを一所懸命に行う、というシンプルなリズムを持っているということ。その自然本意の在り方は、キャンプで火や陽を眺めて過ごす感覚にとても似ています。

そこには阿武町の自然があり、その自然とともに阿武町の生活が成り立っている。

私の感じている満足感は、もしかしたらそんな一見当たり前のことに気づかせてもらっているという高揚感なのかもしれません。

道の駅を活かした体験型コンテンツを鋭意開発中!

またABUキャンプフィールドでは、周辺に持つ自然環境や利便性を活かして、キャンプをより魅力的にする体験やサービスの準備を進めています。
 
例えば、管理棟併設のビジターセンター内の“テストキッチン”では、鮮魚の美味しい食べ方を地元の方にレクチャーしてもらえるコンテンツを計画中です。スーパーで切り身を買うのが当たり前になっている現代で、魚のさばき方が分からない、自信がないという方も多いと思います。せっかくここでキャンプをするなら、新鮮な魚を自ら調理して、美味しく食べてほしい。本プロジェクトのチームは、このような目標をもって、イベントなどを実践しつつ準備を進めています。

ビジターセンターにはテストキッチンとともに、日本ジオパーク認定される阿武町の自然を食で伝えることをテーマとしたカフェもオープン予定です。
 
目の前の海と町とキャンプ場を眺めながら、また館内に散りばめたジオにつながる要素に触れながら、地産の食材をふんだんに使った食を楽しんでいただき、阿武町という土地に思いを巡らせていただきたいと思っています。
キャンプでの調理も楽しみつつ、一方でどこかの朝食・昼食や軽食で、キャンプ場のひとつのサービスとしてご利用いただき、さらに阿武町を満喫いただければと考えています。

他にも、快適にキャンプ体験を楽しんでいただけるよう、サニタリー棟には温水はもちろん、なんとエアコンまで完備(!)。また雨の日に使えるピロティ空間や充電コーナーなど、ハードの面の配慮も充実しているほか、ソフト面でもキャンプ用品のレンタルはもちろん、目の前の港を楽しんでいただけるよう、釣り具の貸出等を検討しています。

これらのサービスを利用いただき快適に過ごしていただきながら、新鮮な食材を生かしたキャンプ飯を楽しんだり、自然を生かしたアクティビティを体験したり、阿武町ならではのジオを体感したりと、町の魅力を存分に楽しんでいただくための拠点としてABUキャンプフィールドの整備が進められています。ぜひ、ご期待くださいませ!

はじまる、縁側キャンプ。

この3年間を振り返ると、髭を生やして一見不審な若松と私を(笑)、みなさんとても快く迎え入れてくださり、町長がおっしゃっていた阿武町民の温かさをいつも感じていました。

毎回それほど長くは滞在できていないものの、人とのつながりがあるからなのか、阿武町に来るとそれこそ“異日常”に帰ってきたような不思議な気持ちになります。これこそが阿武町の目指している“まちの縁側”としての場所の在り方なんだろうと、自らが一番実感しているのかもしれません。
  
ABUキャンプフィールドをきっかけに阿武町を訪れた方に、今度は阿武町そのものを目当てにABUキャンプフィールドを利用していただけるようになったら、それはとてもうれしいことですし、そうなって初めてスノーピークとして地域に関わっている意味が生まれるのだろうと思っています。

無事にオープンした暁には、私も家族を連れて阿武町を満喫しようと思っています。ぜひ、ABUキャンプフィールドでお会いしましょう。


Photo:川嶋克(川嶋克編集室)、岡本拓実