【コラム】from STAFF絶滅危惧「古来種野菜」にこだわる理由。

古来種野菜を知っていますか?

レストラン「Snow Peak Eat」で提供している「古来種野菜」のことを、みなさんはご存知ですか?
 
現代では、日本全国、どのスーパーに行っても同じ形や味をした野菜を通年手にすることができます。それらは戦後、食べ物を安定的に確保するために品種改良をして生まれた野菜です。
 
一方で、「古来種野菜」(在来種・固定種)は、人の手が加えられていない自然本来の野菜で、何百年も前から一子相伝で農家さんが細々と育ててきました。形が不揃いだったり、病気になりやすく、大量生産に向かなかったりという特徴があり、市場に出回ることはあまりありません。

しかし、それぞれの野菜が個性の強い味を持っており、その土地を語る上で欠かすことのできない野菜です。

市場での需要がないために、日本では農家の家庭内だけで食されることが多く、取れた種を蒔き、収穫を繰り返すことで、その品種を絶やさないようにしていますが、生産者は年々減少しています。

ヨーロッパでは、食物の生産背景を理解したうえでオーガニック野菜を選ぶなど、消費者それぞれが自身の考えのもとで選択している。

フランスのマルシェで見かけたユニークな形の野菜。

僕が最初に古来種野菜に出会ったのは、20代前半のころ、フランス各地のレストランを渡り歩きながら仕事をしているときでした。

フランスには、その土地ごとに異なる食文化があり、マルシェに行けばその地域ならではのユニークな野菜が並んでいました。不揃いで奇妙な形のキュウリやカボチャが当たり前のように売られていて、昔から育てられてきた自然本来の野菜を取り入れる食文化に触れられたのは感慨深い体験でした。

一方、日本の現状はそれとは異なるもので、誰にも知られないまま古来種野菜が自然淘汰されようとしています。そのままでいいはずがない。Snow Peak Eatに携わるようになり、それらの野菜を使って知名度を高めていこうと取り組みを始めました。

そのときに出会ったのが、日本に数少ない古来種野菜専門の八百屋「warmerwarmer」を営む高橋一也さんでした。

高橋一也さん(warmerwarmer)。古来種野菜を広め、継承していくためにトークショーやワークショップ、古来種ファーマーズマーケット「種市」などを開催。生産者と消費者のネットワークづくりに尽力している。

古来種野菜のパートナー高橋一也さんとの出会い。

高橋さんとの出会いは、高橋さんが2019年に開催していたイベントを訪ねたときでした。「100日食堂」というイベントで、古来種野菜を使った料理を提供していたのです。そこに何度も通って古来種野菜が持つ自然本来の味わいに改めて心を奪われました。

そして高橋さんが扱っている野菜をSnow Peak Eatでも使わせていただけないかお願いし、日本各地の古来種野菜を供給いただけるようになりました。

例えば、山形県真室川町に甚五右エ門芋(じんごえもんいも)というサトイモがあります。室町時代から、その農家さんの畑だけで一子相伝で作られてきたサトイモです。身はしっかりしていて、口に入れるとスッとなくなる、他のサトイモとはまったく違う感動があります。

野菜本来の旨味や苦味がしっかりある、滋味深いおいしさには、何よりもつくり手の「古い時代から続く種を守りたい」「次の時代を担う子どもたちに知ってほしい」という熱い想いが込められているように感じます。

「古来種野菜」の個性や力強さを活かして、おいしく調理。

古来種野菜は、すべてがおいしいわけではありません。 例えば、今のカボチャは品種改良されて甘くなっていますが、漢字で「南瓜」と書くように元々は瓜(うり)なので、古来種のカボチャは甘くないのです。

しかし古来種野菜には、日本古来の風土がもたらす、その土地で代々受け継がれてきた個性を宿した種から育てられた、自然の力強さがあります。

Snow Peak Eatでは、古来種野菜の特徴を料理人が見極めて、おいしく調理をしてお客さまに提供することで、私たちが未来へとつなげるべき野菜の命、古来種野菜の魅力をひとりでも多くの人に伝えていこうと取り組んでいます。

 

Epilogue

レストラン「Snow Peak Eat」では、キャンプでつくる料理のように、食べたい「食材」と「調理方」を選んでいただき料理をご提供しています。

おいしいものが大好きなスノーピークが、全国でキャンプをしながら出会った生産者たちと、しっかり会話しながら探し出したお肉やお魚。どれも地球環境を考えたストレスのない育ち方をしたものばかりです。

その土地の自然を想像しながら、今まさに食べたいと感じる「食材」をお選びいただいたら、次は五感を研ぎ澄ませて、今食べたいと感じる「調理法」をお選びいただきます。料理をおいしくする炎への徹底したこだわりが生み出す加熱方法をとおして、新しくて懐かしいおいしさを、どうぞご堪能ください。