【キャンプ場開発】From PARTNERキャンプフィールドが循環を生む、阿武町のまちづくり。(後編)

2021年秋、山口県阿武町にスノーピーク地方創生コンサルティングが監修を行うキャンプ場がオープンします。

阿武町長をはじめ、開業に向けて奮闘する町の方々や担当者の想いを全4回連載でお届けします。

第2回となる今回は、まちづくりプロジェクト全体を牽引する花田町長にお話を伺いました。

■お話をうかがった方
阿武町長 花田憲彦さん
1955年生まれ。阿武町出身。阿武町役場で企画課長、総務課長などを歴任し、2017年4月より現職。
趣味は読書、スポーツ観戦、バイクのツーリング。剣道5段の腕前。

現地視察を重ねながら再確認した、阿武町の魅力。

実はそれまでキャンプをしたことがなかった花田町長。

「体験せにゃ、分からん。」と、建設予定地で自らテント泊をしたり、各地のキャンプ場を視察して回ったり、とにかく現場主義を貫き、そのなかでキャンプの魅力や、まちの強みも改めて実感したそうです。
 
「初めてキャンプをしたとき、あたりが暗くなったころに夕食を囲んでいると、異次元の世界にいるような気がしましたね。見慣れた昼間の風景とは全く違った。

それに、いつもは一日がとても短く感じるけれど、アウトドアをしていると時間をすごく長く感じて、得したというか、優雅な気持ちになるんですね。これがキャンプの魅力なのかと思いました。」

2020年夏、スノーピーク奥日田にて、阿武町のPRキャンプを開催。花田町長も参加し、スノーピークユーザーと焚火を囲んで語り合った。

「奥日田や越知、スノーピークさんを含めて数か所のキャンプフィールドを見て回りました。キャンプフィールドに向かう道中のロケーションは、阿武町ならではの魅力だなあと感じましたね。
 
海岸線を走りながら見える、日本海にぽつぽつと浮かぶ島々の景色は、ここに住んでいる僕たちも、美しいなあと常々思っているんですよ。

これはキャンプフィールドに行くまでの楽しみになると確信しました。」

そしてキャンプフィールドに着けば、目の前には海。漁で使う網を広げたり、作業をする漁師たちの日常の光景が広がります。

「日が昇り始める少し前、定置網漁の船が『ブォー』というエンジン音を鳴らして沖へ出ていきます。そして朝日が昇ったころに漁船が戻ってきて、漁師たちが獲ってきた活魚に近い魚がパック詰めされて、お昼前には道の駅の売り場に並ぶんです。それがこのまちの当たり前の風景。

大自然のなかとはちょっと違う、そんな“非日常”も、ここを訪れる人に楽しんでもらえるんじゃないかと感じました」。

キャンプを通じた地域活性の新たなモデルに。

地域内循環を生み出すために、今回のキャンプフィールド建設を決めた花田町長。まちの個性を守り、生かしながら阿武町らしい未来を構築していくには外からインプットすることも大切だと言います。

「我々はやっぱり『井の中の蛙』的なところがあって、企画立案をしても、ひとつ抜けたところがないのが現実なんです。そこはスノーピークさんをはじめ、外部の先端的な考え方を取り入れて、将来を見通したなかで地元とマッチングしながらやっていこうと思っています。

いろんなものを吸収して、咀嚼したものを、地域内で循環していくのが大切だと考えているんです。」
 
まちづくりの話をする花田町長の言葉には、ご自身の実感がこもっていて、何より楽しそうにお話される姿が印象的でした。

「人口3,200人っていう、この規模だからこそ、住民の声に素早く反応できる。だから僕らも本当に楽しいんですよ。喜んでくれる顔が見えるから。

打てば響く、住民の想いを行政に反映するのが自治の基本でしょう? 住民から何か要望があって、いいなと思えたら『よっしゃ、わかった。やってみよう』って踏み切れる。阿武町はそれが実現できるちょうどいいサイズなんです。

住民もそのことを実感してくれてるから、今回のキャンプフィールドの件もそうだし、行政のやることを応援してくれています。

住民のみなさんには感謝しています。いい関係ができているなあと。これが小さなまちの良さなんですよ。」

移住者や来訪者に対しても「住民たちの見る目が、この数年で温かくなってきた。教えてあげよう、助けてあげようっていうムードに大きく変わりました」と花田町長。
 
キャンプフィールドのコンテンツの1つとして考えている地域内での体験アクティビティには住民の協力も不可欠。いまの阿武町なら、来訪者と住民がつながる体験も充分生み出せると感じています。

「キャンプだけで終わるんじゃなくて、キャンプフィールドを一つの起爆剤にして、いろんな体験につなげて、良い効果を阿武町全体に行き渡らせたいと考えています。そういうふうにしていかないと、いけないと思いますね。『あんな立派なこと言ってたのにさ~』って、みんなから言われんようにせんとね(笑)。」

顔が見える、声が聞こえる、阿武町のまちづくり。
キャンプを通じて地域と人、人と人とのつながりや、地域内の循環を生み出す、新たなキャンプフィールドも、その一翼を担っています。

次回は、阿武町とスノーピークをつなげた、本プロジェクトのキーパーソンである一般社団法人STAGE代表理事の田口壽洋さんのインタビューをお届けします。

どうぞお楽しみに。
 
 
Photo:川嶋克(川嶋克編集室)