noasobi essey scene 16「一人遊び。」

7年前の晩秋、家族でキャンプに行った時の事。

寝る前に娘が「ねえお父さん。近所の道路工事の所にいる女の子、知ってる?」と、言い出した。その子は、工事が始まってすぐ姿を見るようになった。
多分関係者の誰かが、何らかの事情で連れてきているのだろうとは思っていた。

近くを通ると、決まってその子は邪魔にならない場所で、一人遊びをしているのだ。
「ポンポコ山のタヌキさん」とか歌いながら、激しく手足を動かしたり、地面に絵を描いたりしながら、夕方工事が終わるまで遊んでいるのだ。年は4~5歳位か。
その子はやがて、通学の女の子たちのアイドル的存在になり、一緒に歌ったりする姿も時折見かけていた。わが娘もその一人だったという訳か。

「何だかほっとけないんだよね」
娘は中学生にして早くも母性愛に満ちた顔をしていた。

親から放任された子供より、一人遊びしながらも近くで親の背中を見ているほうが絶対良いに決まっている。
娘がたまらなく愛しく思えたキャンプだった。


2008年「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」掲載。
この連載では、2004年から「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」で掲載していた記事を再掲しています。