【新商品】from STAFF燕三条職人がつくる「美しすぎる」ボトル。
Gear開発課Ryo Yamashita/山下 亮
Prologue
2021年の新商品として「水を美味しく飲む」ことを追求して開発された「オーロラボトル」は、燕三条の熟練の加工技術によって、1本1本つくられます。一見シンプルに見えて、実は緻密に計算されているチタン製ウォーターボトル。この形状には、並々ならぬこだわりが詰まっています。その知られざる開発秘話をGear開発課マネージャーの山下がご紹介します。
たっぷりと入る800㎖のウォーターボトル。
目指したのは、「水」を「美味しく」に特化したボトル。
エコバッグの利用やごみの分別、使い捨てを減らすなど、私たちが日常生活の中でできるサステナブルな取り組みは、近年すっかり当たり前になってきました。マイボトルを持ち歩くこともその一つ。
スノーピークでは地球環境保全の観点からマイボトルを推奨し、これまでも保温保冷性に優れたさまざまな形状・サイズ・カラーリングのボトルを発売してきました。
誰もが日常的に飲んでいる水。職場や学校、外出先へと水を持ち歩くことが定着してきた今、マイボトルの文化は今後もっと浸透していくものと考えて、「水をより美味しく飲む」ためのボトルの開発に着手しました。
無駄を削ぎ落とすことで「究極のシンプル」を追求する、形状にこだわったウォーターボトルです。
口当たりの良さと洗いやすさのために口元は0.8mmの厚み。
サビや衝撃に強く、軽量なチタンを採用。
ボトルの素材には、水を飲むときにストレスを感じにくく、金属臭の少ないチタンを採用しました。腐食耐性に優れた金属であるチタンは、人体に対して親和性が高く、アレルギー反応を起こしにくいことから、体内に埋め込む人工骨など医療の分野で使われる素材としても知られています。
加工の難しさや資材コストの面などさまざまな課題はありましたが、「水を美味しく飲む」というコンセプトから、チタン以外の選択肢はありえませんでした。
“ウォーターボトル”ならではの思想も盛り込まれています。水本来の味わいを楽しんでほしい、そう考えたときにたどり着いたのが「常温」でした。常温の水は身体への負担が少ないこともあり、あえて保温保冷機能は外すことにしたのです。
容量はたっぷり入る800㎖に設定。サビにくく、ステンレスより軽量で持ち運びやすいことにもこだわりました。
燕三条の職人の技が活きる、究極のシンプルボトル。
オーロラボトルは燕三条の熟練の加工技術によって、1本1本つくられます。一見シンプルに見えて、実は緻密に計算されているボトル。この形状には、並々ならぬこだわりが詰まっています。
まずボトルを手に取って見ていただくと分かるように、溶接の痕が一つもありません。というのも、オーロラボトルは1mm厚の一枚の円盤のチタンから作られていますが、落としても凹みづらいように底面は1mm、口当たりの良さと洗いやすさのために口元は0.8mm、さらに軽量性を最大限に出すために側面は0.4mmという薄さを実現しています。
通常であれば溶接でパーツを継いでいくのですが、継ぎ目があると微量とはいえ汚れが残りやすく、水の味わいに影響が出やすいこと、もちろん見た目の美しさも損なわれてしまいます。全てにおいて余計なものをなくし、水のようにシンプルに仕上げたい─ そんな思いを胸に、燕三条の職人とスノーピークの挑戦ははじまったのです。
それでは、ボトルができるまでの工程を順にご紹介しましょう。
Step 1
オーロラボトルの原型は1枚の円盤。
この1枚の円盤から、段階を踏んで1本のボトルがつくられていきます。まずは加工しやすいように表面に油を塗ります。
Step 2
円盤をプレスしてコップ形状に。
プレスすることでコップのような形状に。成形する金型に加熱冷却装置を設置、部分的に温度を調整しながら側面のみを薄く仕上げていきます。この技術は「温間プレス」と呼ばれ、金属加工の町・燕三条地域で代々伝わる技法です。
Step 3
さらに長い筒状に伸ばす。
さらに筒を縦に伸ばしていく特殊な製造工程。精密な設備と高精度金型を駆使することで薄く伸ばしていく特殊技術です。
Step 4
ボトルの「肩」の部分を成形。
長い筒状に仕上げた後、「ネッキング」と呼ばれる工程でボトルの「肩」の部分をつくります。元々1mm厚だったチタンの円盤から、完成形の形に近づいてきました。
Step 5
キャップの「ねじ」は最低限の長さに。
キャップ部分の「ねじ」を切り込む工程。「ねじ」は、長過ぎればキャップを何回も回さなければならず、短ければきちんと止まらない。経験豊富な製造元の知見に頼り、必要最低限のねじ切り数を実現しました。
Step 6
口元は口当たりを柔らかく。
通常、シングルウォール(1枚の板からつくられたもの)の場合は、「ふちまき」をほどこして口当たりを柔らかくします。しかし微量でも汚れがたまると水の味に影響する可能性があるので、口元だけ0.8mmの厚みを保持することに。口元を溶接で溶かし、滑らかな口当たりに仕上げます。
Step 7
チタンの質感を活かした発色を。
最後の工程「発色」は、塗料を散布する「着色」とは違い、無色透明の液体に電気を流してチタンの酸化皮膜で色を表す手法。例えるなら「虹」と同じように、光の屈折で色が見えるようなイメージです。素材の色を活かしたチタンカラーと、見た目にも美しいカラーをご用意しました。
溶接の痕が一つもない、美しいフォルム。
水の美味しさをこのボトルで感じてみてください。
私たちの想いと燕三条の職人技が結束して生まれたこのボトルは「オーロラボトル」と名付けられました。無駄のないシンプルなフォルム、「水を美味しく飲む」ための究極のかたちです。
ウォーターサーバーなどから移し替えて、常温で飲んでみてください。きっとその美味しさを感じていただけると思います。
長く使うほど効果は大きいマイボトル。たくさんの人々がエコを考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。