冬も夏も快適なロングセラーモデルの誕生ユーザーの声が生んだスノーピーク初のシェルター
夏はフルメッシュで涼しく、冬はフルパネルで寒さを防ぐ。
ユーザーの声によって生まれたスノーピーク初のシェルター。
2000年、ユーザーの熱烈な要望によって生まれたベストセラーシェルター「リビングシェル」。四方にウォールを施し、風や雨、冷気の侵入を可能な限り防ぎ、オールシーズン快適に過ごせるようになったスノーピーク初のシェルターである。
リビングシェルで開発されたフレーム構造は、現在のスノーピークの他のシェルターにも引き継がれている。アップライトポールを使用してドアパネルを跳ね上げ、タープのようにリビングスペースを拡張したり、寒い日にはフルクローズにできるなど、天候に合わせてアレンジが可能。
そして2014年、リビングスペースを拡張し、機能を追加した「リビングシェルロングPro.」をリリース。オプションでインナールームを取り付けることで2ルームシェルターとして使用可能なこのモデルは、フルパネル、フルメッシュにもなることから季節を問わず過ごしやすい。また、ドアパネルを跳ね上げた際、サイドウォールがついているため、雨の吹き込みを軽減しながらリビングスペースを拡張することができる。リビングシェルと同じく、圧倒的な設営のしやすさから、発売早々から今もなお絶大な人気を誇っている。
STORY|開発ストーリー
「寒い季節でもキャンプができるようにシェルターを作って欲しい。」
1998年、ユーザーが涙ながらに訴えたこと。
1998年に長野県駒出池キャンプ場で開催された、キャンプイベントSnow Peak Way。夜、私たちは、ユーザーのみなさんと焚火を囲みながら話をさせていただいていた。愛用している製品のこと、新商品開発の要望や、品質や価格など話は尽きない。
そんな焚火トークのなかで、あるご夫婦の奥様が涙ながらに訴えたことがあった。「私は主人と一年中、日本全国をキャンプで旅をしているけれど、主人がスノーピーク以外の商品を買おうとしない。だから真冬でもタープとテントなんです。寒くて耐えられない」ということだった。タープ&ドームテントで快適なキャンプスタイルを提唱し、日本のキャンプシーンが熟成してきた90年代後半には、オフシーズンとされていた冬でもキャンプを楽しむキャンパーが増えてきていたのだ。
意見は他のユーザーからもいただいていた。「冬の寒い季節でも暖かくゆったり過ごすことのできるシェルターをつくってほしい」など、要望は後をたたなかった。「冬のキャンプといっても、雪が降る地域じゃないので雪中キャンプじゃないんです」という西日本のユーザーの言葉は、冬のキャンプ=雪の中という、新潟にいる私たちのイメージを一掃した。
イベント終了後、社長の山井は、すぐにスノーピーク初のシェルターを開発するように指示を出した。
夏はメッシュパネルで涼しく、冬はフルクローズで外気を遮断する。
早速商品化に向けて開発がスタートした。まず、夏の暑い時期にいかに涼しく過ごすことができるか。開発がスタートするにあたって課せられた命題だった。リビングシェルは、大型ドアパネルとメッシュパネルを備えているので、フルメッシュ、またはフルオープンの状態で抜群の通気性を誇るようになった。本体左右のウォールにもそれぞれ2つの三角メッシュとセンターに大型メッシュパネルを有しているため、通気性を向上させて暑さに対応した。またポールを使用して前後の大型パネルを跳ね上げ、タープ状にすることでキッチンスペースや開放的な空間を確保することを可能にした。
そして冬の寒い時期には、前後の大型パネル、両サイドのメッシュパネルをフルクローズすることで、外気を遮断しながら暖かく快適に機能するリビング空間を目指した。夏場はメッシュパネル、冬場はフルパネルとセッティングを選択できるようにした。気象条件や用途に合わせてさまざまな空間を創り出すことができるようになった。
現在も製品に継承される、シンプルでありながら強度のあるフレーム構造の誕生。
大型シェルターのフレーム構造は、テント以上にシビアな設計を求められる。仮説と検証を進めていく中で、いくつかの課題が導き出された。ドーム形状のテントと比べると、シェルターの形状は縦長のボックス状が多いため、正面と側面の大きさに差が生まれ、風の影響を受けやすい面が出来てしまうのだ。そのため、シェルターの場合は、正面と側面を分けて考え、特に側面で受ける風に耐えうる構造になるようフレームワークを設計する必要があった。
リビングシェルの側面を見ると、AフレームとCフレームで合計4本のフレームで構成されていることがわかる。ハブ(接続パーツ)を使った二股フレームを採用したシェルターの場合は、側面に見えるフレーム本数よりも、天井のフレーム本数の方が重要になる。それは側面で受けた風で構造が傾いてしまった時に、天井に力が集中するからだ。リビングシェルの天井フレーム数は3本に設定されており、その3本の天井フレームが基礎となり構造を保っている。強度を確保するだけならばフレームを増やすことで簡単に解決するが、パーツが増えれば価格に影響を及ぼし、破損リスクも高まっていく。また、設営が面倒であったり、重くて持ち運びができないようでは話にならない。短い時間で設営を行えるよう、使用するフレーム本数は最小限に設計する必要があったのだ。
リビングシェルのために開発された、このシンプルでありながら強度のあるフレーム構造は、現在のスノーピークの他のシェルターにも継承され続けている。
翌年、Snow Peak Way会場に展示された試作品。ユーザーの声とともにリビングシェルが生まれた。
2000年の outdoor lifestyle catalog に掲載された、リビングシェルの初代「ランドブリーズ・リビングシェル」(開発サンプル)。
約1年間の開発期間を経て1999年春、初代リビングシェルはフィールドに姿を現した。四方にウォールを施し、風や雨、冷気の侵入を可能な限り防ぎ、オールシーズン快適に過ごせるようになったスノーピーク初のシェルターだ。
1998年に、焚火トークで話した奥様は、ご自身が本当に欲しかった製品の開発要望が実際に形となり、Snow Peak Wayの会場にセッティングされているのを見て、涙を流した。試作品を見たその奥様は、これでもう寒くないと、今度は嬉し涙で喜んでくれたのだ。あぁ、これが僕らがやりたかったことだと、スノーピークのスタッフもその場で大泣きした。
「作ってくれてありがとう」とイベント中に多くのユーザーからありがたいお言葉を頂戴した。この方々のために、私たちスノーピークは存在している、とスタッフの誰もが実感する出来事だった。スノーピークが向かうべき、ベクトルの方向は、ユーザーの笑顔から考えれば1つの方向を示している。それがスノーピークが見つめる真北の方角だ。
どんな時も、ユーザーの笑顔をつくること。決して変わることのない普遍的なテーマは、Snow Peak Wayとともに生まれ、ユーザーの声を大事にする思想は、リビングシェルとして形になった。スノーピークが、ユーザーに参加していただける世界でも稀な、オープンなモノづくり集団と言われる由縁である。
2000年の発売から、繰り返されるスペックアップ。
ベストセラーシェルター“リビングシェルロングPro.”の誕生。
2000年の発売後も、リビングシェルの改良は続けられた。分割ドアパネル、遮光ピグメントによるシールド加工、大型メッシュパネルから出入りができるようにファスナーを取り付けるなど、スペックアップを繰り返し、現行モデルに成長している。ロングセラーを続けるリビングシェルは、今も多くのユーザーに愛用されるスノーピークを代表する定番のシェルターとしてラインアップしている。
そして2014年、リビングシェルの後方にフレーム1本を追加して、リビングスペースを拡張した「リビングシェルロングPro.」をリリース。オプションでインナールームを取り付けることで、2ルームシェルターとしても使用可能。フルパネル、フルメッシュにもなることから通年快適に過ごすことができる。また、サイドパネルを跳ね上げた際サイドウォールがついているため、雨の吹き込みを軽減しながらリビングスペースを拡張することも可能。リビングシェルと同じく、圧倒的な設営のしやすさから、発売当初から今もなお、多くのユーザーに支持されているアイテムだ。その後、2019年には待望のアイボリーカラーも登場している。