noasobi essey scene06「ワンダラー。」

およそ彼には、これでいいという境界線がないように思える。
常に360度アンテナをフル稼働させていて、少しでも気になることがあれば、躊躇なくそこへ向かう。
ありとあらゆるものが興味の対象で、手を抜くことなく東に西に奔走する。

例えば清流を見つけたとしよう。
すると彼は、側でシュラフにくるまりながら眠ったら、どんな感じだろう、と考える。

うるさいだろうか? 心地よいだろうか?
それとも恐怖を感じるだろうか?......。

すると彼は、その道を何としても自分の目で確かめたくなる。

どんな風景なのか? どんな植生なのか?
動物は? 鳥は?

期待通りであれば、しっかり脳の中にインプットし、外れれば駄目だという事実を仕舞い込む。
そんな彼であるから、方向感覚は抜群で、一度通った道や場所は決して忘れない。

自分だけの大きな地図をそうやって少しずつ塗りつぶしているのだろう。
 
忠実に我が道を行くワンダラー。
今日もどこかの、見知らぬ場所で、森羅万象に耳を澄ませているに違いない。

2009年「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」掲載。
この連載では、2004年から「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」で掲載していた記事を再掲しています。