【コラム】 from STAFFフライフィッシングに心酔。

Prologue

社員である前に、キャンパーであれ。日本をはじめ、世界中のスノーピークのスタッフは、それぞれの「野遊び心」を開放して、自然の中でも、くらしの中でも、全力で野遊びを楽しんでいます。

スノーピークでは、豊かなキャンプ体験に加え、それを基盤にアウトドアアクティビティを楽しむスタイルも提案しています。その一つが、自然との特別な一体感を味わえるフライフィッシングです。2025年からは「スノーピーク フライフィッシング」として、本格的な取り組みを始動しました。
   
今回は、フライフィッシング歴25年以上という社内でも有数の経験を持つスタッフ佐々木に、その魅力について話を聞きました。

◇フライ選びで決まる、魚との心理戦。

ニワトリやシカの毛で自作したフライ。魚からは見えない位置に目印としてピンク色の化繊を付けている。

佐々木:
「釣りには、餌をつけて釣る“餌釣り”、金属製の擬似餌を使う“ルアーフィッシング”、そして“フライフィッシング”と、大きく分けて3つの種類があります。

私のやっているフライフィッシングは、鳥の羽根や動物の毛で作られたフライ(毛ばり)を、魚がいそうな場所に投げて釣り上げるという方法。魚の生態系を正確に理解し、餌を模したフライで魚を釣り上げるという、最も自然の摂理にリンクした釣り方です。

魚の餌となる虫は、季節や川の場所によって様々です。例えば、北海道で春に出てくるカゲロウは、卵から幼虫の間は川底の石の裏にいて、5月~6月に水面に上がって羽化します。魚はそれを知っているんですね。

だから私たちもその季節は、カゲロウを模したフライを選んで投げます。同じように夏ならセミ、秋はテントウ虫などと、その季節に川を流下してくる虫に似たフライを選ぶことからスタートします」

水中の石をひっくり返すと、魚の餌となるカゲロウの幼虫が。

「ちなみに、フライ選びを誤ると、全く釣れません(笑)。

フライフィッシングでは主にマス科の魚を釣りますが、マスは本当に頭が良いんです。ほんの少しでも不自然なことがあれば、流れてくる虫(フライ)が偽物だと気づきます。野生にはかなわない。だから、なおさら観察することが大切です。
 
石をひっくり返して『今の季節はこういう虫がいるんだ』と水生昆虫を確かめたり、水温や気温、水の量、河川周辺の環境を調べたり。これが、パズルのピースを合わせていくみたいで面白いんですよ。

簡単に釣れないからこそ、釣れた時の喜びはとんでもない。苦労して釣り上げた魚は、愛おしくて仕方ありません」

◇赤道を越え、釣りの楽園へ。

南島を流れるアフリリ川にて。川辺には色鮮やかなルピナスが咲き誇る。

佐々木:
「北海道が雪に閉ざされる冬。毎年その時期になると私は、2週間ほど休暇を取って、フライフィッシングの聖地・ニュージーランドに行きます。南半球の現地は夏。そこで釣りに没頭するんです。

人工建造物ゼロの大自然で、風の音や鳥の声以外は無音。果てしなく広がる真っ青な空の下、あてもなく車を走らせてスポットを探します」

白昼に魚影と出会えるマタウラ川。釣り人にとって、ニュージーランドはまさに桃源郷だ。

「ニュージーランドには、クマやワシ、ヘビなど、魚の天敵がいません。なので、魚たちは悠々と泳いでいます。そこに足音を立てずに近づき、悟られないようにフライをそっと投げる。

魚は警戒心が強いので、一度釣り人に気づいたら、決してフライを食べようとはしません。だから一投目が肝心。25年もやっていますが、その一投目を投げる時は、緊張で手が震えるんですよ。

たった1回のチャンスで、フライに食いつく瞬間を見られた時は、最高に幸せです。時間とお金をかけてでも体験する価値あり! できることなら日が暮れるまで、ずっとそこにいたいくらいです」

◇フライフィッシングをより多くの人に。

2025年7月、北海道・十勝で社内研修を実施。全国各地からスタッフが参加した。

佐々木:
「スノーピーク社内には数十名のフライフィッシャーがいますが、さらにその輪を広げるべく、私はいま、全国各地を回りスタッフの研修に力を入れています。

フライフィッシングは、キャスティング(フライを投げる動作)を身につけることが最初の一歩。釣る人の性別や体型の違いを考え、その人に合った投げ方をレクチャーし、初めて魚を釣る『成功体験』へ導くサポートが大切です。

一つのやり方を押し付けたり、型にはめたりせず、それぞれにカスタマイズした教え方で、丁寧にサポートできたらと思っています」

竿を振ってライン(釣り糸)を運び、狙ったポイントにフライを落とす。魚に気づかれないよう静かに届けるのが重要。

「フライフィッシングは、自然環境や河川環境に大きく左右されます。『前にあった桜の木がなくなったな』『去年より水温が高いな』など、川に出向くとおのずと気づくことも数多くあります。

だから、フライフィッシングを楽しむ人が増えるほど、自然を愛する意識が高まると私は信じているんです。だって、魚がいないと釣りが成立しないんですから。

長く続けてきましたが、私はまだまだ飽きないですね。どれだけの川が北海道にあるんだろう。海外含めたら何千、何万? これからも、いろんな川のいろんな魚に出会いたい。この楽しさが1人でも多くの人に伝わればうれしいです」

Epilogue

いかがでしたでしょうか。オンもオフも野遊びを全力で楽しむスタッフたちが、皆さまのアウトドアライフをサポートさせていただきます。是非、店頭、イベントなどでお気軽にお声がけください。