キャンプシーンに欠かせない最強の相棒「ソリッドステーク&ペグハンマー」誕生の裏側

燕三条の鍛造技術が生んだ最強ペグ&ハンマー。

芝生や土、雨の影響で柔らかなフィールド、または火山灰や火山岩の地質のように固いフィールドでも確実に地面に食い込み、雨や風などの自然の猛威に対してもタープやテントをしっかりと支え、キャンパーを守ってきた鍛造ペグ。それがソリッドステークだ。高温で熱せられた鉄棒を叩いて成型する“鍛造(たんぞう)”で製造された最強ペグは、キャンプシーンに不可欠な存在。

そして、ソリッドステークを確実に打ちこむために開発されたのがペグハンマーPro.CとPro.S。ヘッド部分はソリッドステークと同じく鍛造で作り上げられ、振り上げたパワーを確実にペグに伝える。また、Pro.Cは銅の柔らかい金属特性を活かし、打ち込んだ際の衝撃を緩和し、打撃角度が多少ずれてもしっかり食いつく。また、地中からペグを抜く際の機能も充実しており、設営撤収作業がスムーズに行える、スノーピークを代表する製品だ。

強靭なタープを支えるために生まれた鍛造性のペグ。

1995年、スノーピークは、鉄の棒を高熱で熱し叩いて成型する“鍛造”という製造方法を新型のペグ・ソリッドステークに採用した。背景には、その前年、現在のタープの基準としている210Dのヘビーな生地を採用したヘビータープの生産をはじめたこと、そして、強靭なヘビータープを支えるために、軽量かつ高い耐久性を備えたアルミニウム合金(直径30mm)を採用したウイングポールをリリースした。雨風などの衝撃やストレスは、ウイングポールからロープを通しペグに伝わるため、ヘビータープを支えることのできる最強のペグが必要になったのだ。

フィールドのコンディションに関わらず、固い地質でも確実に食い込み、打撃に耐えるペグが開発のコンセプトに決定。そして辿り着いたのは、スノーピーク本社のある新潟県三条市で代々受け継がれてきた鍛造の技術だった。

卓越した技術が集積する燕三条。
この街だからこそ生まれたソリッドステーク。

ソリッドステークは、スノーピークの本社がある新潟県三条市にある鍛冶工場で作られている。鍛造とは、高熱処理を施した鋼を打ち叩き強くすること。叩いて圧力を加えることでより強固な固体へと成長させる金属加工の一種で、日本刀などに古くから用いられてきた技術だ。

ソリッドステークを製造する工場では、高熱処理の段階で誘導加熱炉という電気炉を使用。安定した温度管理ができるため、精密さが問われる製品にも対応可能で、鋼材の肌も滑らかに仕上がる。滑らかなことは、その後の作業工程にも影響する。ひとつひとつの工程の精度と効率を高めることで、より良質で多くの製品を産むことができるのだ。

たとえば、表面を滑らかにするバリ磨りは、専門の“磨き屋”が行うことも多い作業。しかし、1日に上げられる本数には限りがある。そこで、金型のメンテナンスをこまめに行うことで、バリを出さないようにした。ひと手間無くすことで、大量生産が可能になった。

「そういった研究は日々行っています。昔からの技術をいかに時代に寄り添って進化させていくかが重要。柔軟な対応を意識し、製品にかかわるすべての人達と切磋琢磨していけたらと考えています」と職人は語る。

ペグにバリがあればケガのもとにもなり、ロープが切れる恐れもある。この製品が、どのような状況でどのように使われるかを職人自らが理解し、スノーピークの想いに共感してくれるからこそ生まれる製品なのだ。

最強ペグの相棒。
力を確実に届けるためのペグハンマー。

ハンマーなどで叩かれるヘッド打撃面を円柱形に成型しており、打撃時にハンマーが滑りづらく、力が分散せずに伝わるように設計されている。打撃力を確実にソリッドステーク本体に伝えるため、無駄なパワーを必要としない。また大型のフックは、ヘッドが地面に食い込むと同時に地面に刺さるので、ペグ本体が回転せずロープ抜けを防止する。

ソリッドステークが誕生した翌1996年、それを打つために開発された専用のペグハンマーがリリースされた。鍛造の本体に銅ヘッドを備えたペグハンマーPro.Cと鍛造のみのペグハンマーPro.Sの2モデル。ヘッド部分はソリッドステークと同じく鍛造で作り上げられ、振り上げたパワーを確実にペグに伝える。また、ペグハンマーPro.Cは、ヘッドに備えた銅自体が軟らかい素材なので打ち込んだ際の衝撃を緩和し、打撃角度が多少ずれてもしっかり食いつく。使えば使うほど潰れて変形していき、世界に2つとないオリジナルハンマーになるのだ。さらに銅の部分だけ交換が可能なので、柄が折れない限り一生使える。

打つだけでなく、地中からペグを抜くのも得意としている。ペグハンマーPro.の後部にはフックとホールが設けられている。フックはソリッドステーク全種のホールにフィットし、ペグハンマーPro.のホールはジュラペグなどの小型ペグを確実にかつ安全に抜くことができる。ヘビーなソリッドステークから細いジュラペグまで柔軟に対応する。

ソリッドステークとペグハンマーPro。
それぞれの製造の過程

スノーピークの本社がある新潟県三条市の鍛造の技術を用いてソリッドステークとペグハンマーは作られています。それぞれの製造の過程をご紹介します。

【ソリッドステーク】

1.高熱処理
棒状の鋼材を高熱の炉の中にゆっくり潜らせると、銅材が真っ赤な状態に加熱されます。気温や機械のコンディションを見極めて、常に一定の仕上がりを保つ微妙な温度調節が求められる作業です。

2.鍛造
炉を出た鋼材は、火花と一緒に油圧で動く巨大なハンマーで数回打ち据えて、鍛えながら成形します。1本の鋼材から、ソリッドステーク30が2本作られます。

3.トリミング
鍛えられた"ペグの素"を、プレス機でペグの形に切り取ります。鉄が冷めないうちに行わなければならないスピード勝負の作業です。

4.塗装
ヘッド部に丸ホールを開け、最後に黒電着塗装を施せば最強ペグの誕生です。

【ペグハンマーPro.C】

1.鍛造製のハンマーヘッド
鍛造のハンマーのヘッドは丸みを帯びた型ですが、フックは平らな型をしています。これは鍛造時、鉄が真っ赤に熱されている間に、あえて二度プレスをかけているためです。この作業によって、地面深く突き刺さったペグを回しながら引き抜くとき、回転させやすい角度になります。

2.銅ヘッド
ペグハンマーPro.Cのヘッドの素材には、柔軟な銅を使用しています。打ち込み時にペグのヘッドに対して滑ることがなく、また手への衝撃を緩和します。

3.かしの木を使用した木柄を削り出す
木柄の素材は堅くて弾力性のある天然の“かしの木”。柄のサイズにカットされた“かしの木”の木目を選定し、しっかり乾燥させた後に機械で削り出します。さらに、サンドペーパーで角を落とします。

4.木柄にローレットの切り込みを入れる
木柄のグリップ部分にプレス機械を使ってローレットの切り込みを入れます。1回のプレス作業で両面に加工を加えます。この後にクリア塗装を施してヘッドとベルトを着けて完成です。