野遊びと地方創生

雨雲に森ごとすっぽり包まれているかのような深い霧の中、今動き出しても迷うだけだと樹上にとどまることを決めて、足をぶらぶらさせながら葉にはねる雨音をきき、浸蝕してくるような土と樹の香りに満たされて飲む、沢の水で点てた薄茶は、とても甘い。

3m先が見えるようになったら、樹をおりて、木登り道具をまとめて背負い、車まで地図を頼りに下ろうと頭の片隅で社会に戻る道筋をたてる。でも、まだもう少しここにいよう。これが私の野遊び。「感じる」力が少し戻っているような。

自然と触れ合うと、意識せずに感覚がひらいていく。そして普段の毎日がいかに贅沢なものかを知る。人とのつながりが優しく温かいものであることに改めて感謝する。

あぁ、みんなに野遊びしてほしい。野遊び人が共有する、この感覚知ってほしい。

野遊び人の端くれの私が入社して1年弱、日本各地でスノーピークの地方創生の取り組みに関与してきた中で感じている、スノーピークならではの地方創生の特徴について少しばかり、そして私なりの目線でお話させてもらいます。

モニタリングキャンプの様子

スノーピーク地方創生コンサルティングは、アウトドアパーソンが持つ、どんな環境でも野遊びをしてしまう“遊び心”を大切にしています。大自然の中、都市空間の中、様々なフィールドにおいて新たな価値をプロデュースしていくには、野遊びで培われた“遊び心”は人間にとって最も大切な能力の一つと考えているからです。

全員がアウトドアパーソンである地方創生コンサルティングには、特徴的な手法があります。心をつなげるための「モニタリングキャンプ」です。

地域の活性化には、来訪数の増加と、滞在時間を延ばすことが不可欠です。また、我々のコンサルティングが終わった後でも継続する、一過性ではなく長期にわたる活性プランでなくては本当の地方創生とは言えません。キャンプ場などのフィールドはあくまでも土地の魅力のひとつとして再構築し、その土地の魅力の数々と結び付けていくことで、一度ならず幾度も訪れたくなる地域の魅力発信をはかっています。

そのためには、自治体職員だけでなく暮らしている人たちの関与、主体性が必須となります。

「モニタリングキャンプ」は、キャンプというその土地の自然をダイレクトに感じることができる宿泊手段を生かし、その土地に暮らしている人たちと外部から招へいした有識者、自治体職員とが、共にその地域で可能な野遊びアクティビティーやキャンプでの食事を体験し、焚火を囲んで語らいます。

モニタリングキャンプで焚火を囲みながら語り合う

翌朝のワークショップでは、外部の有識者たちから、その土地の自然と人が育んできた、その土地ならではの風景や文化がいかに魅力的なものであるかという意見が多く寄せられます。同時に暮らしている人たちは、地域に今あるものに価値があることと、外に発信していく意義を見出しています。

前日の集合時とは打ってかわり、土地の魅力発信の柔軟なアイディアが地域の人たちから生まれてきます。共に野で遊び、焚火を囲み、正に寝食を共にして語り合うことが、心のつながりを生み出し、魅力を外部に発信する意識の共有を作ってきました。

最後になりますが、私たちスノーピーク地方創生コンサルティングのメンバーについて。

ひとりひとりが全く違う背景をもち、非常に個性的です。全員に共通しているのは、野遊び人であることと、素敵なスポットを見つけたら、家族や友人とその素晴らしさを共有したいという気持ちです。

私たちは、自分が何度でも行きたくなる、そして大事なひとたちに味わってもらいたい土地を作るために、どの土地でも自分ごととして捉え、暮らしている人たちと共に魅力を再発見し、活性化に取り組んでいます。

今後も野遊びが培う“遊び心”とつながりを大切に、日本各地で行動していきます。

つぼい・るな/大学卒業後、学会運営企業、会計事務所勤務の傍らツリークライミングを通して自然と人をつなげる。2018年1月入社。好奇心のままに様々な文化、土地、人とふれあってきたが、何よりも興味があるのは「差異」。自然も人も、人が作った文化も、違いがあるから面白い。野点登山+テン泊ひとり旅が生きがい。事務局をつとめる野遊びリーグでは、女性の野遊び人口拡大を思案中。