noasobi essey scene 14「雪虫。」

10月も半ばを過ぎると北海道では、白い小さな虫が飛び始める。
子供の頃僕たちは、それを雪虫と呼んだ。
雪虫は日を追うごとにその数を増し、11月になると何千何万という大群となって、空を舞う。
体長3mm程の小さな虫は、胴体が白い綿毛のようなもので被われているが、指先でつまむと、まるで淡雪のように消えてしまう。

そんな雪虫は一体どこから飛んでくるのか探しに行こうということになり、友だち3人と裏山に入ったのは、小学5年生の時だった。
笹藪、木のほこら、洞窟、僕たちは探検家になりきって探し回った。
そして道に迷った。

しまいに僕たちは、その心細さに泣き出していた。鼻水を垂らしながら、寒さに震えながら3人で泣いた。
そのうち熊が出るかもしれないと一人が言い出すと、僕たちの恐怖は絶頂に達した。
とにかく道を探そうということになり、僕たち3人は大声を出しながら踏み跡を探した。
そしてやっとのことで道に出た時の安堵感は、今でもはっきりと覚えている。

しかし「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の例え通り、見覚えのある場所に着くなり、誰が最初に泣き出したか、という責め合いになってしまった。

3人とも涙と鼻水と泥で汚れた顔をして、「お前だ」「いいやお前だ」などと言い合う姿を思い出すと、僕はたまらなく恥ずかしくなる。
たぶん他の2人も同様なのだろうが...。


2009年「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」掲載。
この連載では、2004年から「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」で掲載していた記事を再掲しています。