noasobi essey scene 12「初冠雪。」

夕方、稜線から少し下がった場所にテントを張った。
たっぷり砂糖を入れた紅茶に、パンを浸して食べながら、
ラジオで天気予報を聞く。
どうやら小さな前線が通過するようだ。

段々ノイズがひどくなってきたラジオをザックに仕舞い、
白い紙を綴じただけの日記帳を取り出した。
書いてあるのは1/3程で、後は空白のままだ。
ヘッドランプの光の輪で、その白いページを照らす。
まるで舞台のように見える。

今にも小さなダンサーが次々と現れ、踊り回りそうな気がしてきた。
頭を左右に動かすと、光の輪も動く。
激しく動かすと、輪も狂ったように動く。
頭がクラクラしてきたのでシュラフに潜り込んだ。
 
朝、テントから這い出すと、目の前の山頂付近が白く輝いている。
今年初めての雪に出会った瞬間だった。


2008年「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」掲載。
この連載では、2004年から「Snow Peak Outdoor Lifestyle Catalog」で掲載していた記事を再掲しています。