【開発秘話】 from Snow Peakランドロック

Prologue

1980年代、アウトドア=不自由を楽しむという風潮があった時代、スノーピークが提唱したのは大自然の中で快適に過ごし、家族や友人と豊かな時間を共有できるキャンプの形だった。

キャンパー自らがサイトを快適にレイアウトするという「概念」を提唱し、「焚火台」、「鍛造性ペグ」など、キャンパーだから生み出せる革新的な野遊び道具はやがて、世の中の“STANDARD”になった。

それらの製品はどのようにして生まれたのか?今回紹介するのは、大型2ルームシェルター「ランドロック」の開発秘話。

◇ランドロックとは。

スノーピーク史上最大の大きさ、そしてファミリーキャンパーから圧倒的な人気を誇るランドロック。

その堂々たるスクエア型のシルエットは“子どもの成長にも対応する大型のシェルター”がコンセプト。大人2人、子ども3人、家族が快適に過ごせるように考えられている。

大自然の中に居場所をつくることは、大雨、強風など時に予想外の天候に見舞われることもあるが、リビングルームとベッドルームの2つの部屋が一体となった大型のシェルターのため急な天候変化にも適応。一体式のため、面倒なセッティングを必要とせず、スピーディに設営が可能。

ランドロックほどの大きさのシェルターを支えるうえで、「これ以上のフレームワークはない」と今もなお開発者の間で語り継がれるほど、構造的にも洗練されたランドロックは、建てやすさ、耐風性、破損リスク、居住性、使い勝手、コスト、すべてのバランスがとれた究極の2ルームシェルターだ。

そんなランドロックが生まれた背景にある、圧倒的な情熱のストーリーをご紹介しよう。

ランドロックは、家族の成長を大きく包む、テントとシェルターの機能を併せ持つ2ルームシェルターとして2009年にリリースされた。

◇開発者の新たな挑戦のはじまり。

「子どもがだんだん大きくなってきて、今使っているシェルターが手狭になってきた」というユーザーからの声をきっかけに、子どもの成長にも十分に対応できるより広い居住空間を確保する構造をもった、リビングルームとベッドルームの2つの部屋が一体となった2ルームシェルターで開発が、リビングシェルをベースに、開発者の新たな挑戦がはじまった。

一体型にした理由は、設営時間の大幅な短縮が可能なことや、食事から就寝までをシェルター内ですべて行えるため、子どもが昼寝をしている間も、大人は安心してリビングスペースでくつろぎながら様子をうかがえるなど、家族との空間や時間を大切にすることができるからである。

◇一般的な区画サイトを最大限に活用したサイズ感。

小さな子どもがいるファミリーキャンパーの場合、着替えの準備など子どもの荷物が増える。そのため、ゆとりのある広さを前提に、一般的な区画サイトにマッチしたサイズを設定した。一般的に多くの区画サイトが正方形に近い四角形をしているため、ランドロックは、普通乗用車と並べて設置されることを想定し、長方形に設計された。

また、テント+タープの組み合わせの場合、張り綱でスペースを無駄にしてしまうが、長方形のランドロックは区画サイトの有効面積を最大限に活用することができる。

4人掛けのテーブルを人数・シーンに合わせて拡張したり、就寝用のインナールームを取り外せば大人数を収容できる超大型シェルターにもなる。キャンプ場で出会った子ども同士が仲良くなり、夜は家族同士が交流する場となる…ランドロックはそんなコミュニティシーンを想定している。

◇出入りのしやすいスクエア型のシルエット。

ランドロックの最大の特徴ともいえるのがスクエア型のシルエット。スクエア型にすることで立ち上がった側面は、子どもを抱きかかえたままでも出入りをスムーズにすることができる。

また、十分な高さをとっているため、大人でも窮屈な印象を受けることなく過ごすことができ、快適な居住性に貢献している。インナールーム自体もスクエア型のため、子どもの着替えなど動作を妨げることなく行える。寝転んだ際にも、その高さから得られる開放感から、家族が快適に眠ることができるのも魅力だ。

リッジポールに取り付けられたAフレームが正面からの風の抵抗を受け止め、側面からの風はCフレームとセンターフレームで支えている。

◇全長6mの大型シェルターを支える、最適なフレームワークとは。

ランドロックは、これまでスノーピークがリリースしてきたシェルターの中で最も大きく、全長は6mを超える。

そのシルエットは側面が立ち上がったスクエア型のため、風の影響をダイレクトに受ける。この大きさを支え、耐風性に優れた仕様にするための新たなフレームワーク(骨組み)の開発が重要課題となった。

検証を進めることで風による負荷がかかる場所が判明した。最も力が集中する天井部。その力をダイレクトに受けるのがリッジポールだ。

一般的なシェルターはリッジポールを湾曲させることでテンションをかけて固定するが、ランドロックのような大きさの場合、その負荷に耐えきれずフレーム破損の原因につながることがわかった。そこで極力リッジポールを湾曲をさせないフレームワークに変更。圧倒的な強度を生み出すことに成功した。

さらに、短い時間で設営を行えるよう、これだけの大きさにも関わらず、使用するフレーム本数は最小限に設計している。

強度を確保するだけならばフレームを増やすことで簡単に解決するが、パーツが増えれば価格に影響を及ぼし、破損リスクも高まっていく。少ないフレームワークでいかに強度をもたせるかが、家族との快適な時間や空間を生み出すために重要だった。

◇設営のしやすさ、居住性など、全てのバランスがとれた2ルームシェルター。

家族のために考えられた大型の2ルームシェルター。それは、設営しやすさ、耐風性、居住性、使い勝手、価格、すべてのバランスがとれたスタンダードだ。

構造的にも洗練されたランドロックは、リリースから現在に至るまで細部の改良は行ったものの、フレームワークの変更はなく、今も多くのユーザーを雨風から守り、支持され続けていることがその証明といえるだろう。

長年に渡り多くのユーザーに愛され続けるスタンダードモデル、ランドロックはこうして生まれたのだ。

Epilogue

いかがでしたでしょうか。スノーピークが日本のキャンプ文化を築き「不便」を「快適」に変えた理由。それは、自然と人、人と人の豊かな時間を創りたいから。キャンパーだから生み出せる革新的な野遊び道具はやがて、世の中の“STANDARD”になる。