【グランピング】from PARTNER白馬の魅力を引き出して、ここにしかない旅をつくった。

地元の白馬で、本物のグランピングを実現したい。
その想いで集まったさまざまな経歴を持つプロフェッショナルたちの手による、今までにない本格グランピングプログラムを2018年に期間限定で実施。フィールドの設えから体験プログラムまでをスノーピークが総合監修し、北アルプスの絶景を見渡せる北尾根高原で、最高峰クラスのグランピングが実現しました。
まだ誰も知らない体験を創造するために力を合わせた挑戦の日々を、7名のキーパーソンが振り返ります。

●話を伺った方々
(前列左から)
八方尾根開発株式会社 山口聡一郎さん
農園 カフェラビット 児玉信子さん
FUJITA RESORT MANAGING Inc. 藤田直子さん
Floral Design Studio MIKI & CO 大澤美紀さん
(後列左から)
白馬観光開発株式会社 北條正臣さん
八方尾根開発株式会社  齋藤惣三さん
株式会社フリーフロート 屋田翔太さん


※2019年7月に開業した 「Snow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN」の設備やサービス内容は、掲載内容とは異なります。詳細はHPをご確認ください。

「白馬を助けてください」という一通のメール

藤田 あるベンチャービジネスのイベントで山井社長の講演を聞いて、「人間性の回復」という言葉を聞いて、「この白馬とアウトドアビジネスは廃れないな」と思ったんです。「アウトドアビジネスは、これからもっと必要になる」と山井さんから背中を押された気がしました。ただ、白馬には他にない自然資産があるものの、過去の成功体験が邪魔をして、この自然をどう活かすべきかが見えていなかった。高齢化や世代間のコミュニケーションの課題もありました。そこで、山井社長に「白馬を助けてください」というメールを出したんです。

山井さんからは「自分自身が楽しめる本物のアウトドアがある場所が、全国に十カ所ほしい。その中に白馬は絶対に入るので、ぜひ力になりたいです」と、うれしいお言葉をいただきました。すぐに作戦会議をしなくちゃと思い、白馬の有名ホテルで働いていた山口さんを誘いました。今の仕事を辞めて、こっちを一緒にやりましょう、と。

山口 僕にはもともと、ずっとやりたいことがあったんです。今までのように宿泊施設に関わるだけじゃなく、白馬そのものを元気にしたかった。なのでグランピングのお話をいただいて、これだ!と。白馬の何もない自然の真ん中にテントを張って一流ホテルをつくってしまうなんて、ものすごくおもしろいと思いました。

世界のどこにもない、白馬だけの絶景を

藤田 そして、私はアウトドアに弱いので、サポートをお願いしたのが屋田さん。白馬の自然や野遊びを知り尽くした強い味方です。

屋田 山井社長が下見に来られる日にどこを見てもらうか、藤田さんとかなり話しましたね。中でも一押しに決めたのが、この北尾根でした。ここは地元の人たちは好きな場所でしたが、いい使い道がなかった。白馬村の一番低い所から一番高い所まで、すべて見渡せるのがここの魅力。新しい白馬をアピールするのにふさわしいと思ったんです。僕も日本や世界を飛び回ってきた人間ですが、こんな場所は他にないと確信していました。

藤田 下見の日、リフトを降りて歩きながら、山井社長に「僕はちょっとやそっとの景色では驚かないですよ、いろいろ見てますからね」って言われたんです。その直後、ここからの風景を見た山井さんから、お腹の底からの雄叫びをいただきました。あの感動は、忘れられないです。

齋藤 八方尾根開発としては、いつかこの北尾根で事業をやりたかったんです。そこにグランピングの話があって、これなら白馬の魅力を伝えられると感じました。スキー場としては傾斜がなく使いにくい場所ですが、テントを並べるには最適でした。過去にクルマのCMを撮ったりもしたんですが、夏は牛が草を食べているような場所だったんです。

1泊15万円でも安いと思っていた

山口 場所が決まり、次は体験を考える番。料金を1人15万円(※)と仮設定したのですが、その価値をどうつくるか、かなり悩みました。寝て、泊まって、食べて、だけじゃない白馬の自然を感じられるテント泊をはじめ、ここだけにしかない体験を増やしながら、どう掛け合わせて深めていくか。そこに挑戦しなければ、と考えていました。

※「Snow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN」では、お1人様料金(1泊2日)80,000円~120,000円となります(除外期間あり)

屋田 僕は15万でも安いと思ってましたね。僕が昔いた軽井沢のホテルは、1泊40万から100万円。白馬のポテンシャルはもっと高いですから。僕は皆さんのハードルをどんどん上げる役でもあったんです。

藤田 その体験の先陣を切ったのが、白馬観光の北條さん。白馬観光は「白馬バレー」という広域連携で白馬の魅力を発信されています。このグランピングでも、お隣の青木湖なども体験してほしいと思っていて、1泊2日の最初の体験を白馬観光さんにお願いして、岩岳に決めたんです。

「民宿発祥の地」ならではのおもてなしを、グランピングで

北條 岩岳もまた白馬らしい絶景が味わえる場所です。「ウェルカムパーティー」というコンセプトでしたので、いわばこの旅の第一印象が岩岳になるわけです。僕らにとっても初の野外レストランでした。

心を込めたウェルカムにしながらも、初めて出会うお客様どうしの距離を縮めたい。重要なミッションを背負ったなあと思いました。テーブルの距離感やスタッフの間合いなど、考えに考えました。当日は霧が立ち込める幻想的な雰囲気で、寒かったし虫も多少いましたが、それも自然と納得していただいた上で、素敵な非日常体験を提供できました。

山口 北條さんのおかげで、こちらに移動する頃には皆さんいい笑顔で、仲も良くなっていて。こちらは準備にバタバタだったので、本当に助かりました。普通の宿泊施設だと、ここまで仲良くなる必要はない。でも、アウトドアでは人と人をつなげたかったんです。白馬は民宿発祥の地ですから、もともと宿と宿泊者や宿泊者どうしの距離がとても近い。そんなおもてなしを続けてきた土地なんですよね。

藤田 山口さんは別の場所でホテルの仕事をしていた時にお客さんとして白馬のおもてなしに出会い、感動してここで働き始めたんです。そのおもてなしをグランピングでやりたい、という強い想いを表現してもらえました。

大人の女性がヒールで乗っても似合うカヌーを

藤田 そして、料理の担当は児玉さん。自分で野菜も育てて、ジビエの猟や解体もやるすごい女性です。

児玉 お話を聞いたときは「え、寒い季節にテントでディナー?」「カヌーでランチ?」など、クエスチョンだらけでした。ポタージュを温めておいた大きなカップに注いで、それを持つ両手まで温められるようにしたりと、ひとつずつ私なりに答を出していきました。

白馬は夏が短いぶん、素材の力が凝縮されて野菜の味が濃いんです。私は東京でも畑をつくっていたんですけど、関東ローム層で育った野菜と、ここで育った野菜とは全然味が違う。ジビエですと夏のメス鹿もおいしいですが、猪も食べれば体が温まります。グランピングにはあえて「鹿になるか猪になるかは当日決めます」とお伝えしました。その日最高の素材を提供したかったので。

※写真はすべて「FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN」の料理

山口 お客様からは、青木湖のカヌーの上でのランチが印象的だったという声が多かったですよね。

藤田 青木湖って本当にきれいなブルー。深度もあり、吸い込まれそうなほど美しい。あのランチのポイントは、食事もそうですがカヌーの造り込みでした。シャンパンや赤ワインが似合う。大人の女性がヒールで乗っても似合うカヌーを目指しました。

屋田 デザインはスノーピークさんとの共同開発でした。父が木工職人なので、ウッドデッキ調の船の床はぜんぶ手づくり。カヌーを包む布は、機能もデザインも納得できるものを大阪まで探しに行きました。

夜寝られないほどのプレッシャーでした

藤田 カヌーに飾った花も神がかっていましたよね。担当してくれたのが大澤さん。

大澤 カヌーでは船首に花をあしらいましたが、テントに花を装飾するのって難しいんですよね。ふつうなら、まず似合わない。でもスノーピークのテントや椅子やテーブルが本当にシンプルで美しいので、そこから考えていきました。まず、あまり色を入れちゃいけない。自然が主役なので、花が目立っちゃいけない。どのしつらえにもスノーピークのこだわりが詰まっているので、最後に花が入って全体を崩しちゃいけないっていう、もう寝られないほどのプレッシャーでした。

夜中2時までお客様とおしゃべり

藤田 高いお金を払って楽しみにしてくれるお客様は、いいものをたくさん知っているので、細かいところまで手が抜けないんです。児玉さんにしろ大澤さんにしろ、都会でも通用する技を持つ人が白馬に暮らし、地元を愛している。この多様性も白馬の魅力です。

山口 夜の食事を終えてから、ここで焚火を囲んでお客様と焚火トークをさせていただいたんですが、今回の金額に対して「安い」という言葉をもらえて、ようやく安心できました。あいにくの天気でしたが、やってよかったと思いました。それにしても、人と人を近づける焚火の魔力はすごいです。翌朝ご来光を見る予定で「4時半に起こしますよ」と言いながら、夜中2時までお客様とおしゃべりしていましたから。

屋田 天気は僕はポジティブに捉えていて。もし天気がよくなくても、「また天気がいい時に来てくださいね」という口実にもなりますし、雨の日にしかない白馬の魅力を自分たちが信じて、感動を提供することが重要だって思ってましたね。

白馬の底力が10倍にも20倍にもなった

児玉 グランピングは大人の遊び。それを白馬で演出できたことは素晴らしいことだし、スノーピークさんを中心に地元のみんながつながって、底力が10倍にも20倍にもなった気がするんです。今回参加して、私も白馬の魅力を改めて教えてもらえました。スタッフの皆さんがあまりに忙しくて、お料理を食べてもらえなかったのは課題ですけれど……。

齋藤 日本中でイベントをやっているスノーピークの方々は、現場でも情熱がすごかった。言い方はソフトなんですけど、注文がハード。高い要求になんとか応えなくちゃ、負けちゃいけない、と思うことで鍛えられたし、勉強になりました。

藤田 おかげさまでイベントは成功しましたが、本来なら3年後まで予約がいっぱい、というレベルにまでならないといけない。自然のリソースがあって、マンパワーがしっかりあって、力を合わせればこれだけのものができる、という自信を絶対に忘れないでビジネスに育てていかないと、何のためにスノーピークさんに関わってもらったの?ということになってしまう。それをちゃんとやらなくちゃ、と改めて気を引き締めています。白馬のグランピングに、引き続きぜひ注目してほしいですね。

※このインタビューは「2019 Outdoor Lifestyle Catalog」に掲載した内容に一部加筆修正を加えたものです(情報は2018年12月末時点のものです ※一部除く)