自然になじむ曲線美と優れた居住性機能美を追求したワンポールシェルター「スピアヘッド」が誕生するまで

フレームを追加することで新しい構造を生み出したワンポールシェルター「スピアヘッド」。

スピアヘッドは、ポールにフレームを組み合わせた新しい構造のワンポールシェルターです。フレームを追加する事で生まれる室内空間により、大人数でもストレスなく過ごせるシェルターとなりました。ドッキング機能がついているので、スピアヘッド同士を2張、3張とつなげていくことが可能です。

STORY|開発ストーリー

ティピ、ゲル、パオの長い歴史。スノーピークがワンポールシェルター開発に着手した理由。

ティピやゲル、パオといった乾燥地帯や砂漠などで利用される移動式住居のワンポールシェルター。その歴史は古い。過去の文献からもみてとれるように、生活に密接に関係した歴史や、その構造物としての美しさからも、テントの開発を生業とするメーカーとして非常に興味のある分野だった。

しかし、スノーピークが提案する「快適性」を求めたオートキャンプというカテゴリーにあてはめた際、既存のワンポールシェルターが「快適性」に優れているかというと決してそうではなく、また、ワンポールシェルターの歴史や文化を尊重する意味においても、快適性を求めるべきではないと判断し、開発は長年控えられていた。

近年、各社がこぞってワンポールシェルターをリリースする中、スノーピークが開発に踏み切った理由は3つ。1つはグランピングのスタイルを追求し始めていた時期だったということ。もう1つは、ユーザーの皆様からいただいた開発を熱望する多くの声。そして最後の理由は、ワンポールの美しいシルエットを生かしつつ、ワンポールの最大のデメリットである「乏しい居住性」を飛躍的に向上させる構造と、スノーピークらしいドッキングのアイデアが浮かんだからだ。

デッドスペースが欠点とされるワンポールシェルターの構造の見直し。スノーピークらしい快適性に優れたテントへの進化。

ワンポールシェルターの開発をする際、まず取り組んだ課題はいかに「快適性」を向上させるかということだった。ワンポールシェルターはその特性上、センターのポールの先端を頂点として裾広がりに地面へと固定されるため、端がデッドスペースとなり、居住空間に無駄が生じてしまう構造だった。いかにデッドスペースをなくし効果的にスペースを生み出すか。

思考を巡らせていく中で1つの打開策が浮かび上がった。それは、ワンポールにフレームを組み合わせるという、新たな構造だった。このアイデアが生まれたきっかけは、私たちが独自に開発したテント同士をつなげる「ドッキングシステム」の存在。私たちは以前、コミュニケーションをとりやすくする方法として、テント同士を接続する「ドッキングシステム」を発明した。その機能をワンポールに搭載するという発想により、ワンポールシェルターにフレームを組み合わせる構造を考案。このことにより、広い室内空間を確保し、居住性を格段に向上させることに成功した。

また、フレームを通すことにより、大きなベンチレーションを確保することができ、空気の循環が格段に改善した。さらにインナールームを吊るした際、前室部分を土間として活用できるようになるなど、快適性を向上させるアイデアを次々と生み出す糸口となっていった。

雨風の侵入を極限まで防ぐ、ジッパーを使用したドッキングシステム。

ドッキングシステムも新たな進化を遂げている。従来のドッキングシステムは、テント同士が通り重なりあう接続部分の内側と外側、それぞれをロープでテンションをかけることで固定していたが、どうしてもわずかな隙間が生まれていた。スピアヘッドの場合、大型のテント同士のため、接続部から雨風が侵入しやすくなってしまう。

そこで浮かんだのが、ジッパーを取り付ける設計にすることで風の侵入を防ぐというアイデアだった。早速サンプル制作が行われた。仕上がってきたサンプルは、隙間なく接続されたことで、風の侵入を防ぐだけでなく、強度も向上させることに成功した。

FUNCTION|機能

全周にフレームを配置することで、ワンポールシェルターの欠点「デッドスペース」を改善。
全周にフレームを配置することで、狭さを感じさせない広い空間を確保。ワンポールシェルターの欠点だったサイドのデッドスペースがなくなったため有効面積が非常に広くなり大人数でもストレスなく過ごせるようになりました。

力を分散させず一直線に届くように、頂点から地面につながる縫製ライン。
ワンポールシェルター構造の強みである上から下に押さえつける力を最大限活かすため、縫製ラインが地面につながるように設計。その上でフレームを活かしワンポールシェルターのポテンシャルを向上させました。

フレームを取り入れることで生まれる前室空間と、ジッパーを採用したドッキングシステム。
フレームを入れることで、インナーテントの吊り下げ時、出入り口に「前室」空間が生まれ、土間として有効利用可能。また、ドッキング機能がついているので、必要に応じて2張、3張とつなげていくことができます。スピアヘッド同士の接続は、接続部にジッパーがついており、隙間ができにくく、雨風に強い設計になっています。また、ドックドームなどの対応テントとの接続も可能です。

ワンポールシェルターの設営時の改善と工夫。
サークル形状(六角形)は引っ張りあう力の配分が難しく、変形しやすいため自ずと設営しにくくなることが欠点でした。四角形の場合は、直感的に形状をつくりやすいため設営しやすい反面、空間の広さと快適性を損なわれてしまいます。そこで、まずは4コーナーをビルディングテープで結び、テンションをかけながらペグダウン。次に、センターにポールを入れて自立させ、最後に残りの2コーナーをペグダウンすることで簡単かつ奇麗に設営することが可能になりました。

空気の循環を促進。
下部の大きなメッシュ部から空気を取り込み、上部から排出。空気の循環を行うことで、室内をクリーンな状態に保ち、換気機能を大幅に向上させた。また、フレームを通すことで、下部が室内側に傾斜する構造となり、雨水の侵入を防ぐという利点もあります。上部に取り付けられたベンチレーションの開閉は、ジッパーに取り付けられたスティックを使用します。シンプルな構造のため壊れにくく、開閉しやすい仕様になっています。

空気の循環を、大幅に向上。
下部の大きなメッシュ部から空気を取り込み、上部から排出。換気機能を大幅に向上させました。また、フレームを通すことで、下部が室内側に傾斜する構造となり、雨水の侵入を防ぐという利点もあります。上部に取り付けられたベンチレーションの開閉は、ジッパーに取り付けられたスティックを使用します。シンプルな構造のため壊れにくく、開閉しやすい仕様になっています。

グランドスタイルやシェルターなど、シーンにあわせたスタイル変更も可能。
気候などにあわせて、インナーテントを吊るしたり、夏場はリビングシートとフロアマット(マットはインナールームに兼用可能)のみを使用したグランドスタイルへの変更も可能でサークル上での着座はコミュニケーションを活性化させる点においても優れており、目線が低くなるためさらに広さを感じていただけます。グランドシートを取り外せば、大型のシェルターとしても使用でき、チェアやテーブルのセッティングも可能となります。

雨水の浸入を防ぐための工夫が施されたリビングシート。
リビングシートは、底面が非常に大きく、リビングシート側面の反り返り回避のため、立ち上がりの上部をフライシートのトグルに括り、強制的に固定する仕様になっています。グランドシートを使用した際のポール下部の設置面は、開口部を絞り込むことで隙間をなくしており、さらに一定の高さを設けることで雨水の浸入を防ぎます。

機能美を追求し自然界に同化した曲線の美しさ。
ワンポールシェルターの曲線の美しさに加え、フレームを配置することでより複雑なラインを生み出し印象的なシルエットになりました。自然界にある植物などのように全ての形に機能を兼ね備えた「機能美」を追求。さらに、より美しいラインを生み出すために微調整を行い、自然の中に溶け込むラインが誕生しました。