小さく暮らし、自分のスケールを知る

『TINY HOMES』に続き、『SMALL HOMES 』という本を出版した。いずれも、世界中の「小さな家」を取材して、その建て方やそこに住む人たちの家に対する哲学をまとめた本だ。

『TINY HOMES』の出版から5年以上が経ち、70年代に世界各地の民族や部族、都市の庶民たちの自分の家づくりの背景からノウハウのすべてをまとめた『SHELTER』という本を出版した後とよく似た反応を、多くの読者からもらっている。しかも、私のような老いぼれだけではなく、20〜30代の若者たちが反応してくれているのが、嬉しい限りだ。

この30〜40年の間に建てられた家は大きすぎるし、単に家を温めたり冷やしたりするだけで多くのエネルギーが必要となり、お金も掛かる。

そんな経済的な理由に加え、家に対する意識が確実に変わり始めている。天体や自然のサイクルに即した生き方、自家菜園、エネルギーの時給…。70年代の若者たちが描いたDIYな理想の暮らしを、今の時代にあったカタチで、より多くの人が実践し始めているのだ。

より多くの人が自分の暮らしにあった「小さな家」に住み、自分ならではの暮らし方を探し求めている。重要なのは小さな家に住むことではなく、小さな方向へ向かうことなのだ。現代社会では、無理に完全な自給自足の生活をする必要はない。そもそも、スイッチのように自分の生活を白黒反転させることなんて、自然なことではないのだから。ただ、自分にできることが多いほど、お金に左右されることも、権力に頼る必要も少なくなる。それが、小さく始めるということで、自分のスケールを知ることにも繋がるのだ。