Profile / 業界の先駆者として日本のアウトドアシーンを創造してきたアウトドア用品総合メーカー Snow Peak と、キーワードの「旅」を基盤に捉え、日本の技術を活かしたモノづくりをする、俳優 井浦新 率いるアパレルブランド ELNEST CREATIVE ACTIVITY(エルネスト クリエイティブ アクティヴィティ)。KAMAEL(カマエル)は、2つのブランドが手を組み、街と自然を旅するフォトグラファーに向け、日帰りから、一泊二日の撮影トリップに適した機能性をもつギアとアパレルを開発した。
大自然の偉大さに言葉を失い、時を超えて続く人の営みに涙を流し、自分がいかにちっぽけな存在だったかを思い知る。
真実の旅は、いつだって旅人を成長させてくれる。その時撮った写真は、いわば自分の成長記録だ。
確かな演技力を持つ俳優であり、クリエイティブディレクターでもある 井浦新 率いる「ELNEST」が、日本を代表するアウトドアメーカー「Snow Peak」とタッグを組んで立ち上げた、写真を愛し、旅を愛する人のための新しいブランド、それが「KAMAEL」である。
ブランド名は、この世界を鮮やかに切りとるフレームを構えるフォトグラファーと、二度とない一瞬をテントを張って待ち構える旅人の、ふたつの願いを込めて名付けられた。
試作の段階で、スタッフは自然と歴史が融合する島、佐渡への撮影旅行を敢行。自らが絶対に欲しいと思えるまで、プロダクトを徹底的に鍛え上げた。CGが氾濫している時代だからこそ、ありのままの感動をつかまえたい。その夢を叶える機能が、ここにある。
吸湿速乾の生地とメッシュ素材を使用。フロント、後身頃には様々な道具収納できるポケット付き。
SKEL-007
KAMAEL PHOTO HUNTING VEST
42,000円(税別)
テーラードジャケットの形を保ちつつ、スタンドカラーでの着用も可能。
SKEL-008
KAMAEL K.O.M JKT
55,000円(税別)
肩甲骨付近にアクションプリーツ、ウエスト回りに特殊ストレッチ生地を採用。
SKEL-009
KAMAEL C.O.T.W Pro.
63,000円(税別)
その瞬間を逃さないスピード設営構造や、三脚をセットできる余裕の前室など、フォトグラファーがグッとくる機能が随所に装備されているフォトグラファー向けテント「カマエルドーム2」。2014年5月末、「カマエルドーム2」の試作品でフィールドテストをするために佐渡に渡り、3日間のシューティングキャンプを行った。
1日目 二ツ亀キャンプ場
東京23区のおよそ1.5倍の島の中に、1,172メートルの金北山を誇る大佐渡山脈と、645メートルの大地山がある小佐渡山脈を有する佐渡。
海も山も川もあり、島国日本の自然の縮図ともいわれるこの島は、キャンプの醍醐味にあふれた場所でもある。
初日の宿泊地はまるで2匹の亀がうずくまっているように見える岩島のある二ツ亀キャンプ場。佐渡の北の果てにある絶景スポットだ。
まだシーズン前ということもあり、キャンプサイトにいたのは一組のカップルのみ。井浦さんはさっそく新作テント「カマエルドーム2」の設営を開始。
テントの中に三脚を立てて、海の向こうに夕日が沈むのを待ち構えた。雲の切れ間から光を放ちながら、ゆっくりと沈んでゆく夕日を狙い、テントの中で何度もシャッターを切る井浦さん。
初日から幸先よく、最高にいい写真が撮れた。
夕食はテント内で炭火を使えるラウンジシェルでBBQ。サザエやイカの一夜干しなど、佐渡で獲れた滋味深い海鮮をじっくりと焼く。 テストにおいても全力でキャンプを楽しむのがスノーピーク流。初夏とはいえ、まだ肌寒い海風の吹くキャンプ場で、佐渡の銘酒を傾けながら、井浦さんとスノーピークは夜通し熱く語り合った。
2日目 大野亀~小木~宿根木~素浜キャンプ場
まだ真っ暗な4時過ぎ。開発中のテント「カマエルドーム2」で目を覚ました井浦さんは、暗がりの中で朝焼けの撮影準備を開始する。
暁の頃と黄昏時、つまり一日のはじまりと終わりの瞬間に現れる微細な光の変化は、井浦さんのライフワークともいえるモチーフだ。
手応えのある写真が撮れたのか、撮影後井浦さんは再び寝袋にもぐり込んだ。
9時近く、撤収を終えた一行は二ツ亀から近くにある観光名所の大野亀をめざす。
大野亀は、標高167メートルの一枚岩が海に突き出す圧巻の姿が印象的な観光名所。ピーク時には一面を覆いつくすカンゾウの黄色い花が、この日ちらほら咲きはじめていた。
満開になるのは1~2週間ほど後だろうか。気温がぐんぐん上がり夏のような暑さになる中、約30分かけて大野亀の頂上に立つと、見たことのない絶景が広がっていた。
佐渡北側の外海府と呼ばれる海岸は荒海に岩が削がれ、見応えある形を生み出していると、スノーピークスタッフ小杉から聞いた井浦さん。
誰よりも長い間頂上に立ち、何度も何度もシャッターを切っていた。
荒々しくも美しい佐渡の波は、井浦さんの心にどんな形を刻み込んだのだろうか。
昼食をはさみ島の南端、小木地区へ向かう。この地域では、世界中でパフォーマンスを繰り広げている太鼓芸能集団、鼓童の拠点がある。
スノーピークとも親交のある鼓童は翌日の催しの準備という忙しい中にもかかわらず、一行を温かく出迎えてくれた。
主力メンバーは島外での公演ツアー中とのこと。研修生と準メンバーの方たちが、撮影のために生演奏を披露してくれた。
目の前で響き渡る力強い太鼓のリズム。その迫力は想像以上だった。
井浦さんも取り憑かれたように動き回り、まるで太鼓に合わせて踊るようにしゃがんだり前のめりになったりしながら様々なアングルで撮影する。
続いてはなんと鼓童の代表、見留知弘さんが自らソロ演奏を披露してくれた。巴紋の巨大な太鼓を叩く筋肉の動き、真剣な横顔、周囲を支配する熱気。
そのすべてに圧倒されたのか、井浦さんは今だ!と思った決定的瞬間に、シャッターを押せなかったと言う。
しきりに残念がる井浦さん。記憶には確かに焼き付いているはずのイメージが、カメラに収められなかった。
悔しさあふれる井浦さんの表情が、印象的だった。
続いて訪れたのは歴史ある町並みで知られる宿根木。江戸時代の船大工がつくりあげたという町並みは、船板や船釘で建てられた家屋が並ぶ不思議な風景。
旅心が静かに刺激されるその町に迷い込むように、一行はただ黙々と歩き回った。
18時頃、2泊目の宿泊地である素浜キャンプ場へ。営業期間外だったが、鼓童文化財団の上之山さんのお口添えにより特別に利用させて頂けることに。
他に誰もいないキャンプ場で、薪を拾い、テントを張り、料理の準備を終えた頃、美しい夕日が海に沈みはじめた。
佐渡の夕日の光は本当に心の奥まで染みる。
3日目 赤玉杉池まつり
7時頃に全員で朝食。今日も4時頃、井浦さんのテントからシャッターの音が聞こえていたのだが、あいにくいい朝焼けには出会えなかったらしい。
フォトグラファーのためのテント「カマエルドーム2」の使い勝手を、井浦さんはどう感じたのだろうか。
そうめんをすすった後、コーヒーを飲みながら、スタッフたちは井浦さんにテントを使ってみた感想を聞いた。
暗がりでの撮影のために手元を照らすランタンをぶらさげるフックがほしいことや、テントの色の再検討など、井浦さんはリアルで説得力のある気づきを次々と聞かせてくれ、
スタッフがその場で改善策を考え出し提案するなど、議論は白熱。
収穫の多いフィールドテストだという実感が、スタッフたちの心に芽生えていた。
撤収後、今回の旅の最終目的地である赤玉杉池まつり見学へ向かう。小佐渡山脈の赤玉と呼ばれる集落の奥地に伝わる、古いお祭りである。
クルマで走ると本当にこの道でいいのだろうかと不安になるほど人里離れた山奥にある杉池は、小佐渡唯一の湧水地として大切にされてきた信仰の地で、とても神秘的な空気が漂っていた。
赤玉杉池まつりは「鬼舞」「子鹿舞」「花笠踊り」という地元の人々による舞踊が次々と行われる、手作り感のある素朴なお祭りだった。
とはいえ見応えは十分。こんな山奥で、こんなにささやかな祭りが途切れることなく行われている。
その歴史を思うと、なんとも言えず感慨深い気持ちになった。
新潟港へ向かう帰りのフェリーでも、3日間の旅の興奮が冷めやらぬまま井浦さんとスタッフの議論は続き、「カマエルドーム2」の先に開発を予定しているギアにまで話が及んだ。
佐渡という特別な場所と、そこで生きるタフでやさしい人々から力をもらった「カマエルドーム2」は、きっと素晴らしいテントになるだろう。
スタッフ全員が、そう確信することができた旅だった。