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第2回ペグハンマー


最強ペグを打ち抜くペグハンマーの知られざるメリット。

ペグハンマー

ペグハンマー

ペグハンマー

銅ヘッドを用いたペグハンマー Pro.C
鋳鉄ヘッドを用いたペグハンマー Pro.S

最強ペグ「ソリッドステーク」をつくった以上、
それを打ち抜くためのタフなハンマーの開発はスノーピークにとって不可欠でした。
それがペグハンマーです。

ペグハンマーは先端に銅ヘッドを用いた Pro.C と、ヘッドがすべて鍛造スチール製のPro.S の2 種類があります。
この2 つのハンマーは、それぞれにメリットとデメリットがあり、互いの欠点を補う関係になっています。
まずは基本的な機能を紹介しながら、
さらに深いところにあるこのハンマーの魅力を語ります。

ペグハンマー各部解説

覚えると役に立つ、力が最も伝わる握り方。

ペグハンマーは柄の形状、滑り止めのあやめ加工の位置、ストラップの長さ、そのすべてに意味があります。
正しい握り方を覚えておくと、ペグハンマーの機能を最大限に引き出すことができます。

握り方

【1】長いペグを打つ時の握り方

手にストラップをかけ、滑り止めのあやめ加工を施した場所を握ります。
ストラップは持ち手をあやめ加工部分に誘導する長さになっています。 柄を長く持つことで遠心力を利用し、強い力でペグを打ち込むことができます。

長いペグを打つ時の握り方

【2】短いペグを打つ時の握り方

柄の上部にあるくびれ部分を握ります。
短く持つことで、正確に打点を定めてペグを打ち込むことができます。 くびれた形状には滑りを抑える効果があります。



ペグを叩き、ペグを抜く。使命を果たすために生まれたカタチ。

ペグを引き抜く時のハンマーの使い方は2 通りあります。

フックをソリッドステークのホールにひっかける方法

【1】フックをソリッドステークのホールにひっかける方法

フックをソリッドステークのホールにひっかける方法

【2】ハンマーのホールをペグのフックにひっかける方法


ソリッドステーク専用と考えると【1】の機能で十分ですが、 ペグハンマーはフック状のペグにも対応できるよう設計されています。
頑丈なソリッドステークを固い地面に打ち込み、 また引き抜くためには、ハンマー自身も頑丈でなければなりません。
最強と呼ばれるペグハンマー Pro.C(銅ヘッド)と Pro.S(鋳鉄ヘッド)のこだわり抜いた製法をご紹介いたします。

ハンマーヘッド

ペグハンマーのヘッドはソリッドステーク同様、鉄材を鍛造してつくられます。
ハンマーのヘッドとペグ抜き用のフックに注目してください。 ハンマーのヘッドは丸みを帯びた型ですが、フックは平らな型をしています。

ハンマーヘッド

このような形状にするためには、 鍛造時、鉄が真っ赤に熱されている間に一度、図の①の方向からハンマープレスをかけ、
材料が冷めるまでに再度、柄を差し込むための角穴を②の方向から空けることになります。

ハンマーヘッド

普通のハンマーのヘッドを製造する工程は、
柄を差し込む方向に鍛造をしつつ角穴を空けるため一度の作業で完結します。

しかし、スノーピークのペグハンマーはあえて2 度型を抜く道を選択したのです。
この工程は決して効率的ではありません。
鉄が冷めないうちに成形を終えなければならないスピード勝負の作業なので、より困難な工程となっています。
なぜ、わざわざこのような工程を採用したのでしょうか。
それは、スノーピークが理想とするペグハンマーには以下の2 点の機能が不可欠だったためです。

【1】ペグの穴にスムースに入る薄いフック形状

【2】地面深く突き刺さったペグを回しながら引き抜くための強度の高さ


ただ打ち込むだけのハンマーなら、ここまで手間をかける必要はありません。
この2点を高い次元で達成するために、あえて製造が困難な工程を選択したのです。


ペグへのインパクト力の差

ソリッドステーク

スノーピークを代表するペグハンマーは、 先端に銅ヘッドを用いた Pro.C と、ヘッドがすべて鍛造スチール製の Pro.S の2種類があります。
この2つのハンマーは、それぞれにメリットとデメリットがあり、互いの欠点を補う関係になっています。
以下の表をご覧ください。

銅ヘッドを用いた ペグハンマー Pro.C 鋳鉄ヘッドを用いた ペグハンマー Pro.S
メリット 打ち込み時の衝撃が少なく打点がぶれにくい。 ヘッド交換不要。
デメリット 銅ヘッドは交換が必要。 打ち込み時の衝撃が大きく、打点がぶれやすい。
推奨フィールド 地面が硬いフィールド
(砂利や石が地中に混在する地面)
地面が柔らかいフィールド
(砂地や芝などの地面)


ペグハンマーを使い込んでいくと「銅ヘッドの Pro.C の方が、感覚的に楽に打てる」と思う方も多くいらっしゃいます。
実際はどうなのでしょう?
そこで Pro.C、Pro.S の「ペグへの打撃力の差」 を検証するために次のような実験を行いました。
まず、二つのハンマーが同じ条件でペグを打ち込めるようなテスト台を準備します。

テスト台

次に地面が柔らかいフィールドと硬いフィールドを想定した素材(以下、母材)を準備し、 ペグをあらかじめ2/3 程度の長さが突き出るように打ち込みます。

テスト方法

この母材とペグのセットを、ハンマーが真下にある時に、 ペグとハンマーが接するぎりぎりの距離にセットし、テスト台と固定します。

テスト方法

ハンマーを真上に振り上げて支えていた手を放しペグを打ち込みます。
打ち込むたびにペグと母材のセットを最初の位置に移動させます。最後に打ち込み量を測定します。

テスト方法



テスト方法
○打ち込み後のペグの位置 ○打点を同じにするために
母材ごとペグの位置を元に戻します。


まず、非常に柔らかい地面を想定した発泡スチロールと、やや硬い地面を想定した発泡ウレタンフォームを用意し、
それぞれ3度、同じ試験を繰り返した結果の平均値を算出します。
それぞれの母材について、発泡スチロールは3 回、発泡ウレタンフォームは4 回打撃を行いました。
※発泡スチロールの場合、4 回打撃するとペグ抜き用のフックが母材に接してしまうため、回数を減らしました。

発泡ウレタンフォーム (やや硬い素材) 発泡スチロール (非常に柔らかい素材)
Pro.C(銅ヘッド) 8.5cm 8.5cm
Pro.S(鋳鉄ヘッド) 6.8cm 8.3cm


すると発泡ウレタンフォームでは Pro.C(銅ヘッド) と Pro.S(鋳鉄ヘッド)の打ち込み量で 1.25 倍の差が、 発泡スチロールでは 1.02 倍の差が生じました。 この結果により、地面が柔らかいほど2つのハンマーの間に打撃力の差がなくなってくることが予測されます。
次に打ち込む地面(母材)の硬さの差による違いをより顕著にするため、 より硬い母材(木材)を用意して同様の試験を実施しました。
木材については母材の硬さに合わせて10 回打撃を行いました。

木材 (非常に硬い素材) 発泡ウレタンフォーム (やや硬い素材)
Pro.C(銅ヘッド) 1.3cm 8.5cm
Pro.S(鋳鉄ヘッド) 0.9cm 6.8cm


その結果、それぞれのハンマーの打ち込み量の差は 1.25 倍から 1.44 倍にまで開きました。
母材(地面)が硬くなるにつれてPro.C(銅ヘッド)のペグへの打撃力にはっきりとした優位性が見られるようになりました。
ところで、この傾向はハンマーを使う際によく直面するシーンとして、 ハンマーがペグのヘッドを打撃面の中心付近でとらえない場合や、 ペグヘッドの角がハンマーにあたるいわゆる「打ち損じ」 の状態ではどうなるのでしょうか?
その検証のために、硬い母材でペグのヘッドをハンマーの中心でまっすぐ打ち込める角度、 いわゆる「ジャストミートさせた場合」と「打ち損じた場合」について試験を実施しました。
「打ち損じた場合」の設定については、ペグのヘッドの角をハンマーの中心に合わせ、 ペグの打ち込み方向に対してやや角度がついた状態になる様にセットしました。

テスト方法



テスト方法


打ち損じた場合 ジャストミートさせた場合
Pro.C(銅ヘッド) 0.8cm 1.3cm
Pro.S(鋳鉄ヘッド) 0.3cm 0.9cm


その結果、非常に硬い素材にジャストミートで打ち込んだ場合は 2 つのハンマーの差は先ほどの 1.44 倍ですが、 打ち損じた場合は 2.66 倍もの差がつくことがわかりました。
以上のことから、「より反発力の大きな硬い地面にペグを打ち込むようなシーンにおいて、 鉄製の硬いヘッドをもつ Pro.S(鋳鉄ヘッド)では、 地面からペグに伝わった反発力がハンマーを弾く力に変わってしまうのに対し、 Pro.C(銅ヘッド)ではペグからの反発力が銅ヘッドを変形させる一方で、 確実にペグを地中に 食い込ませるエネルギーに変換されていることが証明されました。
これらの検証から、砂地や柔らかい芝地などでは Pro.S(鋳鉄ヘッド)のスペックは十分な威力を発揮し、 より 硬い地面へのペグの打設や打ち損じへの対応は Pro.C(銅ヘッド)が威力を発揮するということがお分かりいただけると 思います。
様々なフィールドを知りつくしているからこそ、2 つのハンマーを用意する。
それがスノーピークがお客様のためにたどりついた結論でした。
最強ペグを深く打つために生まれたペグハンマーにも、こんなに深い設計思想があるのです。

いかがでしょうか。 私たちとしては、機能や設計思想を知っていただくことで、
ペグを打つのがさらに楽しくなりそうだ、と思っていただけたとしたらこんなにうれしいことはありません。
それでは最後に、実験風景をご覧ください。

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