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今回、SPの漆器製品を一通り揃えてみて思ったことは、製品プロデュースに関してSP社が傾注したパワーは、製造メーカーである卯之松堂に対しても多大な影響を与えているという事です。
山中漆器の製造プロセスは、本来商人さんがプロデュースをする訳ですが、SPの立場は大口のオーダーを出した発注者。しかし、プロジェクト自体が卯之松堂に影響を与えた部分は、製品に求めたスタッキング性能、それに付随する個々の製品精度、製品品質の均一性、何よりもSPの製品に対するスピリッツそのものが、商人に与えた影響とでも言うのか、それは木地師である製造工程(高精度旋盤やNC加工機の導入)にも反映していると思うし、塗り師である漆職人にも、同様に多大な影響を与えたのだろうと想像する。
その事実は卯之松堂のHPを見て察する通り、「漆器の出来るまで」というコンテンツでのモデルが、正にSPワンセットであるという点でも確認できる。また、デザイン面では、卯之松堂が製造販売している漆器汁椀の中には、SPワンセットと共有するデザインの物が存在しないにも関わらず、SPが提示したスタッキング性を持ち、和の風情をもちつつも、従来然の高台形状を持たない汁椀を非常にシンプルに処理している点など、モダンアートの領域での協調さえ感じさせるデザインで仕上がっている。
「木」というマテリアルをアートに昇華させるポストモダニズムのスピリッツが生まれた瞬間なんて言ったら、賞めすぎだろうか。