二人三脚で挑む、難燃生地開発。「TAKIBIシリーズ」が生まれるとき

スノーピークアパレルの定番アイテム「TAKIBIベスト」に代表されるTAKIBIシリーズ。

スノーピークが難燃性アパレルを初めて発売したのは2006年のこと。

それから10年後にTAKIBIシリーズが誕生し、2018年からは帝人株式会社との共同開発生地を採用しています。
 
この生地開発に携わる帝人の山下瞬さんとアパレル開発課の菅が、これまでの歩みを振り返りました。

●お話を伺った方
左:帝人株式会社
アラミド事業本部 山下 瞬さん
https://www.teijinaramid.com/ja/

右:株式会社スノーピーク
アパレル開発課 菅 純哉


「まさに、“待ちに待った理想の素材”だったんです」

―帝人のメタ系アラミド繊維「Teijinconex® neo(テイジンコーネックス・ネオ)」を活用した独自素材の共同開発が始まったのは2016年のことでしたね。

 安心して焚火ができる服を作るため、より良い素材を探しているときに帝人さんでつくられていた消防の防火服に使われている素材と出会ったんですよね。

山下 従来の防火服の生地は、コストが高く、染色ができないなどのさまざまな制約があったんですが、それらをクリアする高い難燃性と優れた染色性を備えた「Teijinconex® neo」を私たちが開発したときでした。すごくいいタイミングでスノーピークさんにご紹介ができたんです。

 当時、スノーピークアパレルで採用していた難燃性の生地は、綿の上にあとから難燃加工をかけていたので、経年変化でどうしても性能が落ちてしまうという課題があったんです。「Teijinconex® neo」は、アラミド自体に難燃性があるため、長く使っていっても機能が半永久的に持続するというのが、とても魅力的でした。

 それに、アラミドという繊維は難燃性能が注目されやすいんですけど、それ以前に繊維自体に強度があるんです。綿などの他の素材に比べて破れたり擦れたりしにくいという特徴もあって、キャンプなどのアウトドアでの使用にも適している。まさに求めていた理想の素材でした。

ちなみにTAKIBIシリーズの代表的な製品でもある「TAKIBIベスト」は“着るバッグ”としての要素を兼ね備えているので、難燃性だけじゃなく、バッグとしての丈夫さも必要です。その点でも、アラミドならではの強靭さがマッチしているんです。
愛用しているスタッフも多くいますが、擦り減った、破れたっていう話はまず聞かない。素材とデザインのマッチングが実現したアイテムなんですよ。

「菅さんの提案がなければ、この開発は進んでいなかったです」

―生地開発を進めるうえで、まず当初にどんな点にこだわったのでしょうか?
 
 一番最初は、生地の風合いや着心地でしたね。難燃の機能はもちろん大事です。でも僕らにとっては、普段使いをするのに見た目や質感もすごく重要。
そのまま着るには硬すぎたので、機能を維持しつつ自然な風合いに近づけてもらいました。このこだわりがなくても素材としては成立するのですが、そこを大切にしたかったんですよね。

―共同開発の開始から2年後の2018年、待望の第一弾製品が発売。さらにその翌年にはユーザーの要望から撥水加工も加えたそうですね。

山下 これがなかなか難しかったですね(笑)。撥水剤自体に引火性があって、生地が燃えやすくなってしまうという。

 だから難燃素材に撥水加工をつけるなんて、普通ならやろうとしないのだろうけど、そこを僕らが無理やりお願いしましたよね。
 
山下 はい(笑)。「とりあえず、やってみます!」とお返事して、試作を重ねました。
そのうちに難燃性能を維持しながら撥水性能も発揮できるとわかったので、私たちにとっても新しい発見でした。菅さんからのご提案がなければ、この開発は進んでいなかったですね。

「安全性は絶対に守らないといけないこと。厳しい基準で見ています」

―一見、無茶とも思えるアイデアでも、二人三脚で一つずつ実現しながら、TAKIBIシリーズは進化を続けてきたんですね。

山下 スノーピークさんとのお仕事は、今まで私たちが携わってきた領域では得られない新しい感覚をいただけるので「そういう視点もあるんだ!」って、いつも刺激をもらっています。新しい挑戦はぜひやってみたいですし、前向きに取り組ませていただいています。

 アラミド素材を使いながら、僕らが毎回シーズンカラーを設けて展開できているのは、帝人さんの独自技術のおかげですよ。
 
山下 細かくアラミド生地の染め分けができるのは帝人の特長ですね。スノーピークさんは色にこだわりをお持ちなので、何回も色味をチェックしていただいて。

 それにシーズンに関係なく、唐突に相談のメールをすることもありますね。「こういうことできますか?」って。いつもご対応いただいて、ありがとうございます。
 
山下 正直なところ、最初は「それで難燃性を担保できるの?」って社内の反発もあったんですが、技術チームと試行錯誤してここまで来れました。新しく進化させながらも安全性は絶対に守らないといけないことなので、特に厳しい基準で見ています。
これほどプロ仕様にこだわってオリジナルで開発しているのは、スノーピークのみと言っても過言ではないですよ。

 たしかに、今はいろんなブランドがさまざまな難燃性能のある素材を使ったウェアを出していますけど、アラミドを高い混合率で使ってオリジナルで追求しているブランドは、なかなか稀かもしれないですね。
ちなみにアラミドってリサイクルできるんですか?

山下 実は今、その実験を進めているんですけど、まだ詳しくお話できないですね(笑)

 将来的には「アラミドもリサイクルして使っているんです」って言えるといいですよね。
 
山下 そうですね。リサイクルも近い将来、きっとできると思います。わくわくしながら開発を進めていきたいですね。

 はい、これからもよろしくお願いします!